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キス魔
「叶多…首まで真っ赤。なに想像してんの?」
遥の含み笑いが旋毛に降って来て、カッと体が熱くなる。
まさかフェ何とかみたいだなんて言える訳ない。沈黙のままの俺に遥はクスクス笑う。
なんか、やばい。穴があったら入りたい。
「…もういいよ、カナ。よく出来ました」
遥の言葉をこんなに待ちわびたのは初めてかもしれない。
しかも『カナ』呼びだ。これは遥がめちゃくちゃ機嫌が良い時限定の呼び方だ。何でそんなテンション上がっちゃったのか分かんねーけど。今そんな要素どこにも無かったろ。変なヤツ。
「っ!遥!」
解放され、しかし極寒地獄を脱せて良かったなーとボケッとしていた俺は、またうっかりキスされてしまった。くそ、油断しすぎた。
でも俺の抗議なんか何処吹く風で、遥は鼻唄歌い出しそうな勢いでその後ずっと上機嫌だった。
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