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サク
「…でもよ、お前しんどくねえの」
サクは俺の笑顔に騙されて話を戻した。
いや、察して騙されてくれたのかもしんない。仏頂面のサクに俺はつい苦笑いを零す。
「遥はさ、俺に甘えてるだけだと思うんだ」
他の家庭の兄弟仲なんて知らないけど、割とよくある話なんじゃないかって気がする。片方が片方を貶めて安心する、優越感とかストレス解消とか、そういうの。
きっと遥もソレ。人気者は人気者の悩みがあるんだろ。俺には一生わかんねーけど。
「…だからお前は放っとけねえんだよな」
俺が遠い目で達観していると、サクが若干呆れつつも優しく笑った。スマホをポケットから取り出して、「いつでも連絡しろよ。ツイもラインもやってっから」と、アカウントを教えてくれる。
「愚痴くらい聞けるし」
そう言って野球部の陽に焼けた顔でニカッと笑うサクに、本気でコイツの弟になりたいと思った。
いいなあ、こんな優しくてカッコいい兄ちゃん。ちょっと単純だけど、それもご愛嬌だ。
これ以上頼っていいのかなっては思うけど、時々なら…吐き出していいかな。さすがにキスの事は言えねーけど。サクは今時珍しい純情少年だからブッ倒れる。
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