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自覚
でもオッサンは意外といい人だった。パンッと合掌すると拝むように「それは失敬ッ」と謝ってくる。
何だか時代劇調だ。俺は可笑しくて吹き出す。オッサンよ、許そうではないか。ただ、「いや~しかし滝山にこんな可愛い友達が居たとはなあ。オジサン達と野球しよう!」と懲りずに続けるのは何なんだ?天然か?その誘い方も一歩間違えたら不審者っすよ?
「すんません監督、こいつ体弱いもんで」
とうとう物申そうとした俺を、隠れてヒラヒラ手で制したサクが対応する。
しぶしぶ俺は引いた。いまいち釈然としねーけど、サクの説明も間違っちゃないので大人しく黙る。確かに俺は体があんまり丈夫じゃない。粘膜が弱いのか風邪引きやすくてよく寝込む。遥は超健康なのに内部の機能まで俺は…、俺は…!
どういう事すか父さん母さん!!
「誰が可愛いってんだ…」
そのあと暫く雑談して、嵐のようなオッサン監督はチームのベンチに戻って行った。もうすぐ休憩が終わりらしい。
「悪気はねえ人だから」と苦笑したサクのフォローを聞きつつもクサる。
「んーでもワリ、俺もお前可愛いと思うわ」
しかも味方のサクからもこんな発言。裏切り者!
「はあ!?」と俺は顰めっ面をする。でもサクは「だってなあ」とノンキに頬を掻いた。
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