23 / 74

自覚

でもオッサンは意外といい人だった。パンッと合掌すると拝むように「それは失敬ッ」と謝ってくる。 何だか時代劇調だ。俺は可笑しくて吹き出す。オッサンよ、許そうではないか。ただ、「いや~しかし滝山にこんな可愛い友達が居たとはなあ。オジサン達と野球しよう!」と懲りずに続けるのは何なんだ?天然か?その誘い方も一歩間違えたら不審者っすよ? 「すんません監督、こいつ体弱いもんで」 とうとう物申そうとした俺を、隠れてヒラヒラ手で制したサクが対応する。 しぶしぶ俺は引いた。いまいち釈然としねーけど、サクの説明も間違っちゃないので大人しく黙る。確かに俺は体があんまり丈夫じゃない。粘膜が弱いのか風邪引きやすくてよく寝込む。遥は超健康なのに内部の機能まで俺は…、俺は…! どういう事すか父さん母さん!! 「誰が可愛いってんだ…」 そのあと暫く雑談して、嵐のようなオッサン監督はチームのベンチに戻って行った。もうすぐ休憩が終わりらしい。 「悪気はねえ人だから」と苦笑したサクのフォローを聞きつつもクサる。 「んーでもワリ、俺もお前可愛いと思うわ」 しかも味方のサクからもこんな発言。裏切り者! 「はあ!?」と俺は顰めっ面をする。でもサクは「だってなあ」とノンキに頬を掻いた。

ともだちにシェアしよう!