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決意
――いや、待て
かえって好都合だ。
俺は気を引き締める。早速キスしようとしてくる遥の口の前に、掌を翳して止めた。
「遥。俺、好きな人が出来たんだ。だからもう、こういうの止めてくれ」
一言一句を、丁寧に告げた。至近距離の遥が瞬きをする。
これは俺の決意だ。そもそも、こんなの本当に変なんだ。兄弟でキスするなんて。
初めて性教育の授業を受けた時の衝撃が忘れられない。そりゃそうだよ。恋人や夫婦でする事を、俺は兄貴としてたんだから。続けて口を開く。
「俺は遥が好きだけど、もちろん恋愛感情じゃない。お前とキスしたくない。体にも無闇に触らないで欲しい。ごめん」
早口になった。遥のこれからの反応を予想すると、ガードしてる手が小刻みに揺れそうだった。
別に遥と俺がキスを止めた所で、してた過去の事実は何も変わらない。サクと付き合えるわけでもない。ただの自己満足にしかならない。
でも、嫌なんだ。俺はサクが好きだ。自覚した今、もう無理だ。遥とは出来ない。そんないい加減な事したくない。たとえ暴力を振るわれても、この意志は撤回しない。
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