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涙
「うわ、待ち伏せ?やだっ叶多ストーカーみたぁ~い」
しなを作る遥に腹立つけど、なんとなく俺をリラックスさせようとしてるのかなって思う。昨日の夜からこんなノリだ。
成功率がほぼゼロなのは、兄貴も分かってるんだ。「うるせーな」と隣に怒ったフリをする。これでも俺も考えたんだからな。昼休みにコクったら午後に鉢合わせしたとき気まずいとか。ヘタレ乙。
「か、叶多。裏門から入ろ」
もうすぐ校門という位置にまで来た時だった。
突然遥がそう言って俺の前に立ちはだかった。
いきなり現れた壁みたいな胸にぶつかりそうになり、「うわっ」と急ブレーキをかける。そんな俺を遥は拐うように片腕で抱え上げた。
おい!ここ通学路!
「遥!?何してんだよっ!離せ!」
生徒もそれなりにいるので俺は恥ずかしくなり、空に浮いた脚をバタバタさせる。「暴れんなって」と遥は何故か焦って小声で注意した。
何で小声?疑問に思った俺の耳にその時、聞き慣れた声が届く。
「朝っぱらからじゃれてんなよ、双子」
――サク
心臓が跳ねた。
走りかけた遥がピタッと立ち止まる。その隙に俺はアスファルトの歩道に下り、声の方を振り向いた。
そして―――全身が強張る。
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