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「叶多…」 コンコンとノックがして、遥がドアを開けた。 天井を見上げて開けっ広げに泣いていた俺は驚く。慌てふためき腰を捻りベッドに顔を埋めた。こんなみっともない姿、兄弟にも見られたくない。 「大丈夫か…?」 遥が呼び掛けてくる。すごく弱々しくて消え入りそうで、こんな声聞いたことない。 ずるいよ遥こんな時に。隠れ俺様なくせに、そんな気遣うなよ。ノックとか、普段らしくもないマナーもしやがるし。ずるい。 「…学校、戻れよ」 仮病使ったくせに、俺はこんな事をほざく。口調も刺々しくなった。 何様だよ。これじゃ只の八つ当たりじゃん。マジかっこ悪い。一時的に過ぎないけど、遥は俺がショックを受けないように行動してくれたのに。 その時ふわっと、温かい温度を背中に覚えた。ベッドのシーツを握る俺の手の上に、一回り大きな掌が重なる。うなじに吐息を感じて、遥が覆い被さってきたのが分かった。 触るなって言ったじゃん。「離れろよ」と、俺は俯せのまま突っ慳貪に呟く。

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