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戸惑い
「…いいよ」
どっちかと言わなくても今回の件は俺に全面的に非があるため、却下は難しい。
俺の了解に遥は嬉しそうに破顔した。犬の耳と尻尾が見えそうだ。
「は、早くしろよ…」
俺の二の腕に軽く手を添え、遥はジッと見つめてくる。
解禁してからこういう事が増えた。視線にどこか熱を感じて俺は居たたまれなくなり目を泳がせる。
「ごめん」と遥は微苦笑して口を近付けた。
「……?」
いつもと違う様子に俺はキスしたまま眉をひそめる。
なんか、長い。俺の唇に触れたまま、遥が離れない。じわじわと繋がっている箇所に意識が集中する。遥の体温が俺に移ってくると錯覚する。
俺はソワソワして、眼前のキメ細かな肌も見てらんなくなって目を閉じた。
でも、それが良くなかった。
――これじゃ本気で恋人同士のキスみたいだ…
視界を閉ざした事で、自分達を客観的に観察してしまう。キッチンで、というのがまた拍車を掛けていた。日常的でリアルで、背徳心が疼く。
腰がシンクに密着して後ろに退けなかったから、俺は遥の胸をグイッと力一杯押した。互いの唇が妙な抵抗感を持って引き剥がされる。
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