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『兄』
我が家の兄弟の部屋は離れている。俺が一階で遥は二階だ。
昔は隣同士だったけど、俺が階段から転げ落ちてから引っ越しさせられた。セルフプギャー泣。
薄暗い階段を上がり、廊下をちょっと歩くと遥の部屋だ。
ノックしようとして、止める。中から兄貴の話し声がする。
今はもう夜の10時だ、来客じゃないだろう。たぶん電話中だ。
出直そ、と俺は踵を返した。
「ごめんって、モモ」
――え?
その時、扉越しに聞こえた単語に俺は反応する。
遥…今、『モモ』って言った?
モモって…モモさん?えっ電話の相手モモさん?二人って親しかったのか?
混乱しながら俺は、初めて彼女と会った時の遥の様子を思い出す。明らかに、初対面って感じだった。
サクの彼女って縁で友達になったという可能性もある。
でも俺は嫌な胸騒ぎがして、悪いと思いつつも聞き耳を立てた。気になって仕方なかった。
そしてドアの向こうから届く声に、俺の体温がどんどん下がっていく。
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