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『兄』
「叶多ってさあ…二重人格の俺が怖いんだろ?」
酸欠でクラクラしてきた時、遥がゆったりと囁いた。ぼんやりしていた俺は面前の光景にギクリとする。二人の間を伝う銀色の糸の意味も忘れた。
遥の目が、極寒になっていた。途端に俺の体がワザとかというほど震え出す。それに何故か遥は少し哀しげな顔をして、そして――――
「くっ、はは!ははは!ははははははははははははははははははははは!!」
狂ったように哄笑する遥に、俺は血色を失う。
心底逃げたいと思った。やっぱり遥はもう、俺の手には負えない。誰かの助けが必要だ。お互いの為にも。
遥は笑うのを瞬時に止めると、蒼白で硬直する俺を眇め見た。そして「まあね?確かに俺はそのケがあるよ?」と、幼児を諭すような根気強い口調で告げる。
「でもそれ、双子の自分もって可能性は考えなかった?」
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