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闇の中
*
長かった、と遥は思う。
「ハルぅ…」
とろんとした目で、叶多は遥に手を伸ばした。でもそれが『叶多』でない事を兄は確信していた。叶多は決して自分の前でこんな惚けた表情はしないし、『ハル』呼びもしない。
手が届く前に遥は下の華奢な体を抱き締める。叶多がオチた瞬間に遥は密かに期待した。やっと願いが成就した。ようやく、恋人に会えたのだ。
「『カナ』…っ!」
カナが意識の底に沈んでいる時にも、気分が高まりすぎると叶多の事をそう呼んでしまうのは遥の悪い癖だ。しかし恋人のカナは了承してくれている。
「会いたかった…ほんと会いたかった!!」
余裕のない愛しい人の声に、「うん。ちょっと隠れすぎちゃったね」とカナは赤子をあやすように言う。瞬間、バッと体を離した遥は頭を垂れた。
「ごめん!もうあんな事ゼッタイしねーから!!」
「当然だよ。あれ完全に強姦だったからね?」
恋人の謝罪にカナはプクッと頬を膨らませる。その白い小山に遥は軽く口付けた。
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