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闇の中
「叶多の精神ってねえ、すごく真っ白でキラキラ輝いてるんだよ。あんな強い精神、憧れちゃうよ。そんで黒くグチャグチャに汚してみたいなあ」
カナは主人格の叶多が大好きだ。愛している。大概ねじ曲がっているが。
確かに叶多は性格が真っ直ぐで、汚してみたいという点は遥も同意だ。だが、恋人が他の男の話をウットリした目で話すのは気に入らない。視姦していた遥は、そんな恋人を空腹の獣のように激しく攻めた。耳を嬲られ、舌を穴に捩じ込まれたカナは甘い声を上げる。
「ひゃ、あん!…もう、がっつきすぎだって…」
「うるせーな」
カナの呆れ声をスルーすると、遥は目の前の鎖骨に顔を埋める。チリッとした地味な痛みにカナはハッとした。
「こらハル、痕をつけない約束だろ!叶多が鏡見てビックリするじゃん!」
「あいつは虫に刺されたとしか思わねーよ。…お前ほんっと叶多好きな」
駄弁りながら愛撫を続ける器用な恋人に、カナの頬が朱に染まっていく。指の間までをも舐められ、身体中を遥に貪られる。
「だって、可愛いもん…んッ、純粋でさぁ…サクに恋しちゃった時なんか、精神世界真っピンク。ふふっ」
「お前はサク嫌いなのにな」
「そんな事ないよ」
「嘘つけ。サクを遠ざける為に叶多をイメチェンさせたくせに。すっかり俺だけが悪者だし叶多は被害者ヅラだし結局サクは叶多を構い続けてイミ無えし」
過去を思い出し遥は溜め息を吐く。あの時は大変だった。叶多も抵抗するし――まあ当然だけど。サクには質問責めにされるし。
でも恋人の望みは何としても叶えたい、その想いで遥はゴリ押した。兆候はあったもう一つの自分の性格が、明確に外に出てきたという有難くないリターンはあったが。
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