カナが叶多をキャラ作りしてイメチェンさせたのは、その時すでにこの未来を可能性として思い描いていたからだ。 馴れ馴れしいサクが嫌だったのもあるが、将来閉じ込められても元々ぼっちであれば寂しくないだろうと。これでも主人格の事を第一に考えているのだ。感謝して欲しいくらいだ、と副人格のカナは思っている。自分がずっと恋人と共に居たいだけだが。 叶多の二重人格は先天性だ。ほぼ同時に生まれた人格のくせに、自分より桁外れに強い精神力を持つ叶多にカナは焦がれた。憧れた。 でもその叶多に、自分の存在が気付かれていない事を察したカナはショックを受けた。何故なのかは分からなかった。しかし二重人格は互いに覚えていないのが一般的らしいので、副人格の方がバグなのかもしれない。 とてつもない寂寥をカナは感じた。弱い自分は、愛する叶多の目には入らないのだ。 幼い頃は叶多の精神も未熟だったから、大した障害もなくカナも容易く表に出られた。 でも、僅かな年齢のその当時でもカナは気付けた。自分たちは『異端』なのだと。両親も兄も幼稚園の先生も友達も、みんな基本人格は一つだった。どうしてか、それをスッと理解した。 だから、カナは沈んだ。 強い叶多に主人格を譲った。自分と、何よりも叶多が傷付かないように。覚えのない差別を受けないように。 その頃は、まだカナの精神は歪んでいなかった。そのきっかけは、やっぱり遥だった。