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闇の中

カナは遥に恋をした。 どうしても遥と話したくて遊びたくて、主人格にしたはずの叶多を押し退けて外に出た。 まだ遥は弟の二つの人格に気付いていなくて、叶多同様カナにもたくさん優しくした。兄に触れたくてキスをしたくて、カナが『おまじない』を作ったのもこの頃だ。元気が出るというのは出任せじゃない。好きな人にキスされたら元気くらい出る。 でも、遥は気付いた。弟の中の二人に。 そして悩み苦しみ、一時は周囲の『叶多』の認識と違う性格のカナを兄は恐れた。毛嫌いした。カナは悲しくて、泣いた。 しかし、遥はカナを受け入れた。自分の精神も分かつ事で己を保って。 その時には俺もカナに惚れてたんだろうなぁ、と遥は言った。もう一人の彼が証拠だ。そしてカナと恋人同士になった。 もちろん体は叶多のものでもあるので、最初お互い抵抗はありすぎた。でも一度セックスしてしまうと止まらなかった。叶多への罪悪感は当然あった。 そして、年月が経つにつれ強固になってきた叶多の精神の隙をついてデートをした。それは主に遥の部屋での逢瀬だけで終わったけれど。二人は幸せだった。 しかしカナが本格的に叶多の力に圧され始め、どんどんその機会が少なくなっていった。 顔には出さなくても遥が悲しんでいるのが分かり、カナは申し訳なかった。今では叶多が眠っている時、しかも深い睡眠時でしか副人格は外に出られなかった。 遥は怖いのだ。自分が叶多の中から出られなくなる事が。消えてしまうかもしれないという事が。そう、カナは確信した。

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