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第3話 中庭の天使 Ⅲ

エレベーターの中は二人っきりで、何か話さなきゃと思うのに 無情にも直ぐ5階に着いてしまった 当然降りる彼の腕を 俺は咄嗟に掴んでいた 「は!? 何!?」 「あ!! あの!! この前ゴメン!! 覗き見なんかして!!」 「…は⁇ 覗き⁇」 怪訝そうな顔付きに 嫌な汗を掻きながら、俺は必死に言葉を選んだ 「その…中庭の君が 凄く綺麗で…だから…えっと…君と!! 仲良くなりたくて!!」 「…キモ」 「…え⁇」 今まで言われた事の無い台詞を上手く呑み込めなくて 俯いていた顔を上げると、彼は汚い物でも見るかの様な顔で俺を見ていて いつもの姿とはかけ離れているその表情に これ以上無い位のショックを受けた 「…陸也⁇」 目の前の彼と同じ声色が 少し離れた場所から聴こえて、車椅子でやって来たその人物に目を開いた 「兄さん!! 出歩いて大丈夫なの!?」 「ん…これから検査だから…その前にトイレって思ったんだけど…」 俺の腕を振りほどいて 車椅子の少年に駆け寄った彼は陸也と言うらしい 二人は何度も交互に見てしまう程瓜二つだった もしかしなくても…コッチの子が… 「…君は…この前の…」 一瞬 驚いた様な表情で俺を見ていたが 直ぐにニコリと笑い掛けてくれて、その笑顔を向けられた俺は 聖域に足を踏み込ませて貰った様な 不思議な感覚に襲われていた

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