9 / 41

第8話 病気

「あ 陸也も来てたんだ⁇」 海音の病室に入ると 陸也が横の椅子に腰掛けていて、俺を見るとスッと立ち上がってくれた 「俺 あっちのソファ座るから、永遠コッチ座りなよ」 「悪いな ありがと」 「別に…」 陸也と海音は 外見はよく似ているけど、接していると全然似ていない事が分かる 海音は ふわふわしていて 穏やかに笑うけど、陸也はあまり感情を表に出さない でも 海音を大切に思ってる事は伝わって来るし、こうやってさり気無く優しい 「あ 見て サーフィンしてる 永遠もあんな風に出来るんでしょ⁇」 「うん 一応ね」 テレビを指差して笑う海音を 素直に可愛いなと思った 「凄いなぁ…永遠がやってる所見てみたい…」 この時の俺は 海音の病気の事を全く分かっていなくて、テレビドラマと同じ様に そのうち治るものだと思っていた だかはいつも友達と話す様な感覚で 言葉を発してしまったんだ 「海音の体調が良くなったら 一緒に行こうよ」 そう俺が発言した時 一瞬空気が凍りついたのが分かった 居た堪れない雰囲気に 海音と陸也を交互に見ると、海音は困った様に笑っていて 陸也は俺を睨みつけていた 「…うん…行けたら…良いな」 海音がそう呟いた直後、看護師さんが入って来て 検査の時間だと海音を連れて行ってしまった 海音の居ない病室は しんと静まり返り、唾を飲み込む音すら聞こえそうだ 「…ねぇ…去年兄さんが 何回家に帰って来れたか知ってる⁇」 「…え⁇」 陸也の問い掛けに 俺は間の抜けた声を出してしまった 陸也は さっきと変わらない表情で俺を見ている 「0回だよ⁇ この意味分かる⁇ 永遠がさっき言った事って すごく残酷なんだよ⁇」 言いながら 陸也の瞳には涙が溜まっていて、今にも零れ落ちそうだった 手を伸ばそうとして 松葉杖に躓いてしまった俺は、手をつきながら陸也を見上げた 下を向いた事で 陸也の瞳から 涙が一筋流れ落ちて、そんな資格無いのに 俺も目の奥が熱くなった 陸也は顔を乱暴にゴシゴシと拭いた後、俺の手を取り 起こしてくれた 「…陸也…海音って 何の病気なの⁇」 「…色々…一個治ったと思ったら 違う病気が発症して、治療してたら治った筈のが再発してとか…ずっと…ずっとその繰り返し…」 言いながら松葉杖を拾ってくれて、俺はそれを受け取ると ゆっくり立ち上がった 「…永遠」 「うん⁇」 陸也に ジッと見つめられて、反応に困ってしまった しかも さっきまでの睨みつけるような感じじゃなくて、どこか縋り付く様な視線に見えた 「陸也⁇」 「…ごめん…何でも無い…」 結局陸也の視線の意味は この時は分からなくて、それを理解出来たのは 季節が変わった頃だった

ともだちにシェアしよう!