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第19話 救済 Ⅲ〜side永遠〜
少ししてから 陸也にグイッと肩を押され、反射的に下を見て息を呑んでしまった
陸也の白い身体には 幾多もの大きな手術跡があって、先日のお母さんの言葉が頭を過る
俺の視線に気付いた陸也は まだ赤い目をした顔を一瞬歪めると、はだけていたシャツの両端で自分の身体を包み 俺に背中を向けた
「…ゴメン…泣いたりして…別に 何もされてないし…もう平気だから」
「…陸也」
「…俺と兄さん…珍しい血液型だからさ…輸血とか…ドナーとか…滅多にいないんだ」
「…そう…なんだ」
こんな時に気の利いた言葉の1つも出て来ない自分が情け無い
この傷跡を見たら、また海音のドナーになってあげてくれなんて、とてもじゃないけど 俺の口からは言えなかった
陸也は震える手でボタンを留めようとしていたが、無くなっている箇所もあったりで 上手く留まっていない
俺は自分のベストを陸也に着せようとしたが、首を横に振られてしまった
少し離れた所に放置されていた陸也自身のベストを拾うと、後ろ向きで袖を通しながら俺に話し掛けてくれた
「…永遠の話って…何だった⁇」
「あ…いや」
「もしかして…制服でうちの母親に会った⁇」
「…あ……うん」
「…俺は」
そこまで言って言葉に詰まった陸也は、振り向いた後 何故か縋る様な目で俺を見ていたが、直ぐに俯いてしまった
「…陸也⁇」
「ごめん…今日は帰る」
そう言って立ち上がった陸也の足は震えていて、その姿に憐情の気持ちが湧き上がり、咄嗟に細い手首を掴んでいた
「送って行く…じゃなくて、送らせて欲しい」
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