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第30話 心憂
まるでドラマや映画のワンシーンの様だった
「俺が海音に会いたいだけだから大丈夫」
「…永遠」
エレベーターから降りた時、永遠が病室に入って行く姿が見えて、俺はそのドアの前に立ち尽くしていた
駄目だと思っているのに 少しだけ引き戸を開いて聞き耳を立てると 涙が頬を伝った
兄さんが泣いた所、久し振りに見た気がする
俺の前では辛いなんて絶対に言わないし、顔にも出さない兄さん
永遠と兄さんの会話からはお互いを大切に思っている事が伝わってきて、それはとても良い事な筈なのに胸の奥がズンと重くなった
隙間から見えた2人の雰囲気に とてもじゃないけど割って入れる気がしなくて、俺はまたエレベーターの方へと戻って行った
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