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第36話 燈 Ⅳ

見慣れた道に 俺は声を張り上げた 「海音!! もう直ぐ海に着くぞ!!」 少しでも早く海を感じたくて、俺は窓を開けた 「ほら、磯の香りがしてきた!!」 「…ほんと…なんか…しょっぱい匂いがする…」 「だろ!? もう直ぐだから!!」 早く早くと気持ちばかりが急ぐ そのせいで 前ばかり見てしまっていた 「次の角曲がったら もう見えるからな!!  スゲェ綺麗だから 楽しみにしてろよ!!」 「…うん」 あと少しの所で信号に捕まり焦ったくなる 車がまた走り出した時、海音が小さく呟いた 「…ほんと…すごく…きれい…」 その言葉と同時に位に 待ちに待った海が見えた 「海音!! ほら!!」 隣を見ると 海音はいつもの笑顔で目を瞑っていて、その姿に呼吸をするの忘れてしまった そっと口元に手を当てると 今まで堪えていた物が溢れ出して、俺の頬を濡らしていった

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