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第1章7話 恋患い②

汚れた欲情を向けることさえ躊躇われるほど好きになってしまった人の面影を脳裏に浮かべながら、城野は終わりを目指す。 「……あン……あっ……深いっ……い、いい……あぁぁ 甘ったるく喘ぐ、女の腰骨と肩を掴んで打ちつける速度を更に速める。 「…ひっ……」 「黙って」 「えっ…何…?……あン……ひゃぁ……」 「声出すなよ」 僅かに挿入の角度を変えたのは悦ぶためでも悦ばせるためでもなかった。 「そんな……ムリ……ひっ…あン……うっうっ、気持ち……いひ…あっ、ああぁぁぁあ……」 * そのまま眠ってしまったのか、女は突っ伏したまま動かない。スレンダーな体型と染めていないショートカット。彼女を選んだ理由はそれだけ。 汚れた身体を洗い流すよりも、一刻も早くここから立ち去りたい衝動に抗えず、ホテル代よりはるかに多い金額をテーブルに置いて、一度も振り返ることなく、城野は外に出て行った。 城野にとって女と寝るのは遊びでさえなかった。 母親譲りのその美貌で城野は幼い頃から男にも女にもよくモテた。言い寄ってくる全ての人間とその日の気分次第で寝て、そして容赦なく切り捨てた。 誰も、誰かの代わりになんて、なれないのに。 だけど諦められなくて。 求めれば求めるほど 汚れていく。 遠くなる。 ーーオレはクズだ 鼠色の空が泣き出して、城野の頬をポツリと濡らした。

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