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第2章2話 再会、それから

「どうしてコイツがいるの?」 改めて城野を坂下から幼馴染として引き合わされた時、筒井は実にイヤそうな表情(かお)をした。 その表情を見た坂下は仕方なさそうに笑う。 自分以外の誰かに向けられる笑顔。 それが痛くて…… だけどそんなことにさえ耐えらないと思う自分の狭量さを、もしも坂下に知られたら、きっと嫌われてしまうと思うから。だから城野は 「よろしく」 と、自分から手を差し出した。 けれど男にしては白く美しいその手に筒井は直ぐには応じようとしない。 「俊、お前なぁいくら城野が男前で女の子にモテるからってその態度は良くないぞ! ほら、握手、握手」 坂下は二人の手を強引に繋がせるとそこに自分の手も重ねてブンブンと上下に動かす。 「モテるのは女の子にだけじゃないようだけど?」 そうぼそりと呟いた筒井を城野は鋭い視線で威嚇する。 ーー黙れ 「おぉ、怖っ」 「俊!さっきからお前は感じ悪いぞ。何だよ、訳の分からないこと言って」 「訳、分からんって、マジか……」 お手上げと筒井は空を仰ぐ仕草をした。 * そんな風に城野の色のなかった日常に坂下ゆづるという色が戻ってきた。 愛しいその色は、城野の心を時に鮮やかに、時に温かく、時に切なく染めていく。 「最近なんかいいことあった?」 マンションを訪ねて来た深月は、まるで答えが分かっているみたいに嬉しそう聞いた。 「なんで?」 「ふふふ、男の人ってそうやって質問に質問に答えるのよね」 彼女は特別な誰かを思い浮かべるように優しい顔をした。 「ずっと……ずっと会いたかった人に会えた」 「そっか、そっかそっか!良かったね、城野」 首に腕を回して抱きついてきた細い身体を城野は柔らかく抱き止める。 「もう私はいらないね」 スッと身体を離して深月は真剣な表情で城野を見つめる。 「バカ。深月は特別だよ」 数えきれない女とセックスした。 その誰にも感じることのなかった感情……それは決して坂下への恋情とは比べようもないものだったが、確かに城野の中で彼女は特別だった。 もしかしたらそれは彼女の中に見た城野自身への憐憫だったのかもしれない。 「あのね、今の城野にこんなことお願いしたらいけないのかもしれないけど…… 「何?言って?」 「会って欲しい人がいるの」 「やばいっ。御両親に挨拶とか?」 「んー、実は兄なの」 「お兄さん?」 「そう、心配性のシスコン兄貴があれこれうるさく聞いてくるからもう決まった恋人がいるって言ったらもう……そっから会わせろ会わせろって」 深月は苦笑しながら話しを続ける。 「兄、佑月はね……自分が私の初恋の相手をとったと思ってるの……そのことをずっと気にして私が幸せな恋を見つけるまでは、自分も幸せになっちゃいけないって。バカだよね……」 「お兄さんの相手って……」 「男よ。私たち幼馴染だったの。兄とその人は、ずっと想い合ってた。邪魔してたのは私なのにね。だからさぁ、いい加減その思い込みっていうか誤解っていうか……呪いを解いてあげようかなって。城野、力を貸してくれる?」 城野は恋人として深月の兄に会うことを了承した。 兄を解放することで、深月が自分自身を許すことを願いながら。

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