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第2章23話 秘めた恋心

「じゃぁ」と軽く手を上げて立ち去る後ろ姿。 その人はやはりというか、当然とういか、深月ととてもよく似ていた。 「本当にホームまで見送りに行かなくても良かったのか」 「うん」 ホームには行かないと言い出したのは深月だったのに、いつまでも、いつまでも去っていく兄の背中を見送っていた。 城野は何も言わないままで、ただ彼女の気が済むまで隣に立っていた。 初めて寝た日に彼女は城野に言った。 「私さ、本当に好きな人とは絶対一生結ばれない運命なの。だからね、誰でもいいの」 その言葉の本当の意味を城野は、今日初めて理解()った。 兄の前で明るく振る舞う彼女の声が。 「もう、佑月ったら、相変わらず心配性ね」 なんて顰めみせる表情が。 兄が自分を見ていないと分かっている時にだけ、送る視線が。 彼女の髪の一本一本。 指先がーー 肩がーー 彼女の全ての細胞がーー ーー佑月が、好きだ と叫んでいた。 「さて、帰ろっか」 そう言って、隣に立つ城野に向き合った時、彼女はもう、いつもの深月に戻っていた。 きっと、今までも彼女はずっとあんな風に叫んでいたのだ。 好きな人のすぐ隣。 一番近い場所で けれど 一番遠い場所から。

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