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第2章12話 癒されて
動物園のゲートを背にしてふたりは歩き出す。
「なんか食って帰ろうぜ」
「ああ」
「お前の奢りな」
なんでだよ?と坂下が隣を見ると
「だって、付き合ってやったろ?」
なんて筒井は、すました顔をした。
「よく言うよぉぉー。無理やり付いて来たくせに」
だけど、本当は分かっていた。
心配してくれていたこと。
城野の部屋から逃げるように出て来たくせに、どこにも行けなくて。
城野と「いつか二人で行こう」と、約束をしていた場所へと、無意識に坂下の足は向いていた。その途中でばったり会った親友は、紙のように白い顔した坂下を見て
「よぉ」
いつも通りの笑顔で近付いて来て、だけど虚ろな目をした坂下を一人に出来ないと思ったのだろう。まるですぐそこのコンビに行くみたいな気軽さで、自分も「動物園」に行くと言ったのだ。
「ありがとう」なんて言ったなら、きっと親友は大げさに驚いて「何がだよ。やめてくれ」と言うだろう。だからその代わりに坂下は
「お前の好きなもん、何でも食っていいぞ」
食いしん坊の男が喜びそうなことを言ってやる。
「おっ、マジで?」
思った通りに男は目を輝かせる。
「お前の金で、お前の好きなもんを食う。なんの問題もないだろ?」
「ちぇぇぇ、喜んで損した」
俺のさっきのトキメキを返せ、とかなんとか、親友のぼやきが聞こえてくるから、自然と坂下の緊張は溶けていく。
優しく温かで、平和な坂下と筒井の日常がそこにはあった。
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