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第2章16話 学食で②
「あれ?城野は?つか、お前またカレーうどんかよぉぉー」
テーブルの上に置いてあるのは確かに城野の鞄で、だけどそこに持ち主はいなかった。
ポツンと目の前にある鞄が、まるで忘れられて、置きざりされたみたいに坂下には見えた。
「あ?さっきまでいたけど、スマホ持ってどっか行った」
丼から麺を持ち上げた箸を空中で止めて、筒井は答えた。そして城野が立ち去っていった方向をあっちと顎で指し示す。それは坂下が入って来たのとは逆方向の学食の出入り口だった。
「そっか」
城野がいないことにどこかホッとしている自分に坂下は苦笑する。
あれから会うのは今日が初めてだった。
会った時、まず最初に何と言おうかと、そればかり考えて。だけどどれも違う気がして。だから何も思いつかないままにここにきた。
それでも、そわそわと落ち着かないのは、やっぱり会いたいからだ。
何も聞かずにおこう。
それだけは決めていた。
城野が「要らない」と言うなら、坂下は友達に戻るだけだ。
その癖、ちくりと針で刺されたみたいに胸が痛んで、坂下は顔を歪める。
「おい。大丈夫か?痛むなら、早く座った方がいいぞ?」
原因不明の痛みの発作は、もう何年も坂下を苦しめていた。
何軒もの病院で検査を受けても、痛みの原因である病の診断名は、告げられなかった。
「いや。平気だ」
心配する親友の言葉に、坂下の声は固くなる。痛みの発作だと、勘違いさせてしまう程、自分は辛そうな表情 見せていたのかと申し訳なく思う。
だけど、さっしのいい男はすぐに、にやけて
「何だよ。そっちか。気になるなら、行ってこいよ」
手に持った箸で大げさにしっしっと坂下を追いやった。
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