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第2章21話 壊して
言い捨てて、置き去りにするように、立ち去った癖に。追いかけて来る気配が城野のものじゃないと分かるから、後悔だけが胸に押し寄せる。
すれ違う学生が、何かあったのかと、目を見張るくらいのスピードで坂下は歩き続けた。それで吐いた言葉が取り消せる筈もないのに。
「どうした?らしくないじゃん」
やっと立ち止まった背中に声をかけてきたのは、思った通りの男で。
「俺らしい、って、何?」
乾いた瞳で、だけど泣いてるみたいに、坂下は答えた。
「俺の知ってる『坂下ゆづる』はわざと誰かを傷つけてやろうなんて一ミリも思わない奴だよ」
親友の言葉に坂下は俯いて薄く笑う。
「オレも、そう思ってたよ。ついさっきまで」
将来 を語らない城野が悲しかった。
語らない城野の将来 には、自分はいない気がして。
何も聞かなければ、失わずに済むと思った恋なのに。
あの日、閉じ込めた感情は、こんな形で吹き出して、閉じ込めた分だけ腐敗して、大事にしたいと願った恋を壊そうとしていた。
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