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第3章 思い出の眠る町で2
「坂下ぁ?」
「あ、あー!佐々木?!!」
「お前、変わんないなぁ。すぐ分かったよ」
「お前だって全然、変わってないぞぉぉ」
アイドルみたいな風貌の同級生は昔からとても目立っていた。
「相変わらず、キラキラだな」
「なんだよ、キラキラって」
笑う目元と茶色の髪。
脳裏に何かが引っかかった。
その正体を捕まえようと坂下は記憶を探る。
ここで過ごした最後の夏。
花火大会の夜。
あの夜にも佐々木は今日と同じように声をかけてきた。
浴衣姿で何故か裸足で。
手に赤い鼻緒の下駄を持って。
「お前、2学期から転校しちゃうんだってな」
河原に続く薄暗い道を並んで歩いた。
「ああ」
「おばあさん……亡くなったって、聞いた」
「うん。ってか、なんでお前裸足?それ、履かないの?」
明日の天気を聞かれたみたいに、なんでもないふりで返事をして。
関係のない話しに振った。
癒えない後悔という傷。
「あ?これ?あははは」
クラスメイトは手に持った下駄を目の高さくらいまで持ち上げて、揺らして見せた。そして困ったように笑ったその後で、優しい顔 になって言った。
「これは、深月の」
ーー深月
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