45 / 64

第3章 思い出の眠る町で10

思い出はいつだって甘さよりもっと切なくて。 坂下の胸を(いた)ませる それは甘い記憶を共有した男が今はもうそばにいないから。 ーーユキ 唇の動きだけで名前を囁いて、その指の動きを真似てみる。けれどどんなに快感を追いかけても、坂下の粘膜は受け入れるどころか、それを拒むように硬く閉じたままだった。 欲望を吐き出すことも叶わず坂下は、甘く汚れた両掌に顔を埋めて泣いた。

ともだちにシェアしよう!