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第3章 俊介 2

どう見ても、坂下に惚れきっているようにしか見えない癖に、城野には女の影が見え隠れした。 それが筒井を苛立たせる。 そんな筒井が城野と顔を合わせるのは決まって坂下を交えての三人でのことで。 言い争いになるのは、坂下が席を外したり、待ち合わせの場に現れる前の僅かな時間でのことだった。 「それなら、俺に親友を返せ」 「ゆづが、お前のもんだったことが一度でもあるような口ぶりだな」 身も凍るような冷たい視線を筒井に投げて、吐き捨てる。 「ああ。坂下は俺の大事な親友だよ。ろくでもない女と天秤にかけるなんて許さない。アイツを傷付けるな!」 そう言いながらも、坂下ならたとえボロボロに傷付いても恋を全うするだろうと筒井は顔を顰めた。 「大丈夫だ」 だと笑ってみせるだろう。 見ているこちらの方が切なくなるあの笑顔で。

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