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第4話

駆けつけた時にはもう遅かった。 救急車の中に運ばれて救命処置を行ったが、おばあちゃんは息を引き取ったようだ。 「おばあちゃん!おばあちゃん!!」 僕はおばあちゃんの体を揺すって、日頃出さないような大きな声でおばあちゃんを呼んだ。 おばあちゃんはピクリとも動かず、体も冷たかった。 「おばあちゃん…、なんで………」 大好きだったおばあちゃんを突然失くした悲しみで、僕の涙は止まらなかった。 救急隊員の方が僕の背をさする。 「私たちが駆けつけるまで、あのお兄さんがずっと心肺蘇生をしてくださってたんです。残念な結果にはなってしまいましたが…。」 救急隊員が目をやった先には大学生くらいの男性が立っていた。 それが雅治さんだった。 救急隊員や警察の方、そしておばあちゃんとぶつかった車を運転していたのであろう雅治さんが、僕とおばあちゃんに頭を下げた。 僕は雅治さんのことが許せなかった。 「どうして僕のおばあちゃんを殺したんですか?!この人殺し!!あなたが死ねばよかったのに!!」 僕は癇癪を起こしてそう言った覚えがある。 雅治さんは何も言い返さずに、ただ「ごめんなさい。」と、僕に謝り続けた。 たくさん泣いた後、警察に聞かされた話だが、雅治さんが通る直進車線の信号は青。 そして、おばあちゃんが通っていた車線の信号は赤だった。 雅治さんはただ青信号を通っただけなのだ。 法定速度以内で、ちゃんと左右も確認していた。 そこに運悪く、おばあちゃんがバイクで飛び出したらしい。 そしておばあちゃんの体内からは睡眠薬の成分が検出されていた。 おばあちゃんの鞄の中に睡眠薬があったことからも、睡眠薬を飲んでバイクに乗っていたと判断された。 現場には目撃者もいて、弁護士の先生に「示談にしましょう。」と、そう言われた。 おばあちゃんの実の娘である母は、おばあちゃんの亡骸を見ながら静かに泣いていた。 おばあちゃんは僕のために仕事を頑張る母にも、親らしく務めていた。 おばあちゃんは本当に優しかったから。 母はおばあちゃんのために一生分の涙を流しただろう。

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