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第5話
後日、おばあちゃんのお葬式が行われた。
親戚やおばあちゃんの友人、近所で仲良くしてくれていた人。
優しくて人当たりが良かったおばあちゃんを、たくさんの人が見送りにきてくれた。
「出て行きなさいよ!!この人殺し!!」
参列者に挨拶をしていると、母が叫んだ。
会場がシン…と静まる。
母さんの前に立っていたのは、雅治さんだった。
「せめてお焼香だけでもさせていただけませんか…?」
「帰りなさいよ!!あんたがいなければ母は……!!」
母は腕から数珠を外し、それを雅治さんに投げようとした。
僕はそれを止める。
「母さん、止して。警察の方から聞いたでしょう?この人は悪くないって。」
「千佳はおばあちゃんが悪いっていうの?!」
「そんなこと言ってないよ。でも、この人は安全運転をしてたんだ。この人を責めることなんてできないよ。」
僕の言葉で母は大人しくなった。
周りの視線が集中している。
こんな場で怒鳴るのも違うと、冷静になって考え直したのだろう。
「お焼香だけよ。さっさと帰りなさいよ。二度と私たちの前に姿を現さないで!」
「………失礼します。」
雅治さんは深くお辞儀をして、おばあちゃんにお焼香をした。
雅治さんに過失なんてないのに、大金ともとれる慰謝料を置いて帰っていった。
雅治さんが慰謝料として寄越したお金で、おばあちゃんの墓を建てた。
立派な墓だ。
こんな事故がなければおばあちゃんはお墓にさえ入れてあげられなかったかもしれない。
……なんて、そんなこと言ったらまるで事故が起こってよかったみたいな言い方だ。そういうつもりはないのだが。
日中仕事で忙しい母の代わりに、僕はよく墓を掃除しにきていた。
初めは一人だった。
立派な花も添えてあげられなくて、でも毎日磨きにきて、天国のおばあちゃんに声をかけていた。
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