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第7話

「雅治さん。僕、雅治さんのことが好きみたい…。」 雅治さんに気持ちを伝えたのは大学を受験する少し前だった。 雅治さんの部屋で、勉強を教えてもらっていた時だったと思う。 「…………本当?」 「き、気持ち悪いよね…。やっぱ聞かなかったことにしてください。」 雅治さんが拍子抜けした顔をするので、慌ててなかったことにしようとしたが、それは次の雅治さんの行動によって止められた。 「俺も…。千佳くんのことが好きだよ。」 抱きしめられて、雅治さんにそう言われた。 僕もおずおずと雅治さんの背中に腕を回す。 初めこの気持ちに気付いた時は、男同士でなんてありえないと自分に言い聞かせた。 でも日に日に気持ちは増すばかりで、受験を迎えた今、気持ちを伝えることを決めたのだ。 そもそも行きたい美大は都内にあって、母からは駄目だと言われている。 雅治さんはそんな僕の家庭の事情を知っていても、美大へ行くことを勧めてくれていた。 しかも、都内へ引っ越して一緒に暮らそうという。 この告白が失敗したら雅治さんのことも美大へ行くことも諦めて、母の言う通り近くの国立大学へ行こうと思っていたのだ。 まさか雅治さんも僕のこと好きだったなんて…。 僕は美大を受けることを決めた。 雅治さんとは合格するまではと、キスなど受験の気が散るようなことは一切しなかった。 そして僕は無事第一志望の美大に合格した。 母は僕に「どうやって東京に通うの?」「お母さんそんなお金ないよ。」と怒った。 「雅治さんと東京に行く。僕、雅治さんと付き合うことにしたんだ。母さん。」 僕がそう言うと、母は目を見開き、そして顔を真っ赤にして僕に怒鳴り散らした。 「雅治って、まさかあの人殺し…?千佳、あなた正気なの?!あいつはお母さんを殺したのよ?!」 「母さん、何度も言ってるけどおばあちゃんは事故だったんだ。雅治さんに非はないよ。それに、雅治さんは毎日おばあちゃんに手を合わせてくれていて…」 「あの墓花もあいつの持ってきたものだったとかいうんじゃないでしょうね?!あいつの備えた花を飾ってたなんて、考えただけでも気持ち悪い!!あなた一体何を考えてるの?!」 母は僕の言葉を聞こうとはしなかった。 そして僕に言った。 「この親不孝者!出て行きなさい!二度と帰ってこないでちょうだい!!!」 母が怒ることは予想できていた。 だけど勘当されるなんて…。 そして、僕は雅治さんと東京に行った。 これが僕の過去だ。 ──────

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