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第8話
長い夢だった。
母とあんな別れ方をしたのはまだ後悔しているが、今の暮らしに不満はない。
好きな人と、自分の選んだ将来への勉強をしながら一緒に過ごしているのだ。
今日は茉歩と会えるし、そのことも含めて色々聞いてもらおうかな、なんて。
そしてお昼を過ぎた頃、インターホンが鳴った。
「千佳〜!元気にしてた?」
ドアを開けると二年ぶりに見る親友の姿。
薄く化粧をしていたり、服装が大人っぽくなっていたり、少し大学生らしくなったかな。
「茉歩!久しぶり。僕は元気にしてたよ。そっちは?」
「見ての通り!それよりすっごく綺麗で大きな家だね。」
「まぁ、中でゆっくり話そう?」
「それもそうね。お邪魔します。」
茉歩をリビングへ通し、アイスコーヒーを出す。
今日夢に見たから割と鮮明に茉歩へ思い出話をした。
茉歩はストローでアイスコーヒーを飲みながら、楽しそうに僕の話を聞いていた。
「おばあちゃんのことは残念だったけど、素敵な出会いができてよかったね!おばあちゃんが亡くなった頃の千佳、元気なくて本当に心配だったんだよ?」
「うん。ごめんね。でももう大丈夫だから。雅治さんのおかげで乗り越えられたっていうか…」
「惚気か!」
「えへへ。」
茉歩に小突かれて、僕は照れ笑いした。
そして茉歩はニヤニヤと僕のスマホを指差す。
「それよりさ〜、その彼氏。雅治さんの写真ないの〜?」
「え、あるよ。」
「見せてよ!」
「しょうがないなぁ…。」
僕はスマホの写真フォルダを開き、スクロールする。
雅治さんとはたくさんデートに行っているし、家でもふざけて写真を撮ったりするので、ツーショットはたくさんある。
だけどやっぱり人に見せるなら映りがいい写真を見せたい。
「ねぇ、まだ〜?」
「ちょっと待ってよ…。うーん、これが一番雅治さんがカッコよく写ってるかな。どれもかっこいいんだけどね。」
「まーた惚気て……、って、え?」
「茉歩、どうした?」
写真を見た途端、茉歩は硬直したように動かなくなった。
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