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第9話

「この人……」 「え、なに?雅治さんのこと知ってたの?」 「千佳、今すぐこの家出よう?!家に帰ろうよ。お母さんにはちゃんと謝って、それで…」 「何言ってるの?茉歩。急にどうしたの?」 青褪めて震え出す茉歩を一度落ち着かせて椅子に座らせる。 背をさすっても茉歩の震えは止まらなかった。 「千佳…、あのこと覚えてる?ストーカーされてた時のこと…」 「え…?あぁ、なんかあったね。」 僕は高校三年生の頃。 そうだ、ちょうどおばあちゃんが亡くなる一ヶ月前からストーカーに遭っていた。 男がストーカーに遭うなんて恥ずかしいから、親友の茉歩にしか教えていなかったな。 「それがどうしたの?」 そんな昔の話よく覚えていたなと思いながら、茉歩に聞き返す。 茉歩は怯えたように僕のスマホを指差して言った。 「私…、見たの……。千佳をストーカーしてたの……、その人だよ………?」 「え?」 意味が分からなかった。 雅治さんと出会ったのはあの事故の時だし、そもそも茉歩は今までストーカー犯を見たなんて僕に一度も言わなかった。 なんで今更…。 「事故があってから千佳はストーカーのこと言わなくなったし、もう大丈夫なのかなって…。おばあちゃんのこともあって混乱してたから、言わなかったの…。ねぇ、まさかとは思うけど、千佳のおばあちゃんって事故じゃなくて……」 茉歩が続きを言いかけた時だった。 「やぁ。君が千佳の友達?こんにちは。」 雅治さんが部屋に現れた。 普段仕事しているときは絶対に部屋から出ないのに。 どうして……? 「なんでそんなに震えてるの?千佳ったら、部屋の設定温度下げ過ぎたんじゃない?」 雅治さんは不思議そうに僕に尋ねる。 茉歩はまるで怪物を見るような目で雅治さんを凝視し、冷や汗を垂らしていた。

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