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第10話
雅治さんはニコニコしながら茉歩に近付く。
茉歩はさっきよりも大きく震えた。
「千佳。友達具合悪そうだから送っていくよ。」
「え、いや…。僕が送るよ。」
「昨日も言ったでしょ?俺は千佳が俺以外の人と付き合ってると思われるのが嫌なんだ。」
雅治さんは「ほら。」と茉歩の腕を掴む。
「嫌!!触らないで!」
「どうして?俺と君、初対面だよね?」
「あんた、千佳のおばあちゃんを殺したんでしょう?!おかしいと思ったの!いつも眠るのは得意だって言ってたおばあちゃんが睡眠薬持ってるなんて!全部あんたが仕組んだんでしょ!事故に見せかけて、弱った千佳に近付いて!」
「ねぇ、何言ってるの?」
「千佳のストーカーもあのあとぱったりやめたものね?私見たんだからね、あなたが千佳のストーカーをしてたところ!こんなことして千佳と付き合えて幸せ?ねぇ、千佳を返して!!」
茉歩は雅治さんに向かって叫ぶように言った。
こんな茉歩は初めて見る。
笑えない冗談だと思ってたのに、まさか本気?
「煩いなぁ。」
「きゃっ!!」
雅治さんは茉歩を突き飛ばした。
そして少しずつ茉歩に近付いていく。
「千佳!逃げて!!」
「いい加減黙れよ。」
「キ……ぁ……、ち……か………」
目の前の光景に頭の処理が追いつかない。
雅治さんは何処から取り出したのか、倒れた茉歩の喉をナイフで突き刺していた。
茉歩の喉からはドクドクと血が溢れ、床を赤く染めていく。
逃げなければならないということだけは分かった。
目の前の、雅治さんという怪物から。
「千佳、どこに行くの?」
「ヒッ…!!」
腰が抜けて、足がもつれて、それでも逃げようとした。
勿論それは叶わなくて、雅治さんが満面の笑みで僕の行く手を塞ぐ。
「邪魔者は消えたね。もう二人だけだよ。」
リビングの奥では親友の死体が転がっている。
目の前の、この愛していたはずの男が殺したのだ。
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