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未央side
「ママ‼はるが、ひろ叩いた‼」
ぎゃんぎゃん泣きながら、大翔が駆け込んできた。
「さっきまで仲良くしていたのに、どうした?」
一番末っ子の大翔は甘えん坊で泣き虫。
やんちゃな陽人に玩具を取られ泣いて、叩かれては泣いて。
僕にピタリと張り付いていた、アツが大翔を抱き上げてくれた。
「ひろは、ママがいいの‼」
ぶすっとして、アツを睨み付けた。
「ママは、ひろだけのものじゃないぞ」
「ひろの‼」
大翔も負けてはいない。気が強いのは、パパ譲りかな。泣いた顔と怒った顔が、パパにそっくりだって寺田さんが。
「未央、冷えてるビールある?って、何してんだお前らーー大翔、パパっておいで。ママ、忙しいから」
キッチンに、佳大さんが入ってきた。大翔は、彼にとって初めての子。本当は、目に入れても痛くないくらい溺愛したいはず。
「パパ‼」
彼の顔を見るなり大翔は、破顔し、手足をばたつかせて、おおはしゃぎ。
「はるが、ひろの事、叩いたんだよ」
「そっか。じゃあ、陽人を怒らないとな。でもな、大翔、お兄ちゃんたちの言うことをちゃんと聞かないと駄目だぞ」
大翔だけ依怙贔屓しない。アツとの間に産まれた奏人と、陽人と分け隔てなく愛情を注いでくれる。
「うん‼」
アツの腕から、佳大さんの腕にだっこされ、つめちゃいと言いながらビールを両手に抱き締めた。
「ちなみに未央は、お前だけのもんじゃないぞ。俺の大事な妻でもある」
「佳兄に負けないくらい、俺だって、愛してるし」
口喧嘩は日常茶飯事。
「アツも、佳大さんも、大翔の前だよ。仲良くして」
タイミング悪く奏人がひょっこり顔を出した。
「ひろ、おいで。ママと、パパたちが仲良くしないと、赤ちゃん来ないよ」
「にいたん、ほんと⁉」
「うん。だから、邪魔しちゃいけないんだよ」
まさか奏人からそんな台詞が飛び出すとは思わなくて吃驚した。
「ラシャさんだな・・・」
アツも、佳大さんも頭を抱えていた。
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