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未央side
「ママ、パパ~‼」
奏人と陽人が、アツの手を引っ張ってきた。
「いやぁ、すぐ二人に見付かって。ボランティアも授業の一環だから、パパお仕事なんだよって二人に言ったんだけど、全然離れなくて。困っていたら、マハーマ王太子殿下が声を掛けて下さって」
「彼は、学生である前に、一人の父親。ハロウィンは年に一回しかないのだから、家族で楽しまなければ。ミオ、あなたの夫は若いのにしっかりしている」
マハーマ王太子に誉められ、アツ恥ずかしいのか頭を掻いていた。
「大翔、ママっておいで」
「おじちゃんとあちょぶ」
「だから、その方はおじちゃんじゃなくて・・・」
両手を伸ばしたけど、大翔はぶんぶんと首を横に振った。しかも、陽人まで片方の腕に抱上げてくれた。陽人も、初めて見るひげに大興奮。
「二人とも‼」
慌てふためく母の声は当然ながら聞こえていない。
「ミオ、私には子供がいない。だから、少し面倒をみさせて欲しい。たまには、夫婦水入らずで過ごしたらどうだ?」
そこに、ラシ様と、ヒーリーさん、寺田さんが現れた。イシャンら三兄弟と手を繋いで、幸せそのもの。四人共、寺田さんが大好き。アリシャは”ママ”と呼んで慕っている。
「ママ‼見て‼見て‼」
駆け寄り、バスケットの中を得意気に見せるアリシャ。
「頑張りましたね、アリシャ。パパ達と、何か食べて来ますか?」
「うん‼」
溢れるような笑顔を振り撒きながら寺田さんと手を繋ぎ、会食会場の大広間へ向かった。
「ミオ、ラクシュマン達の面倒見は任せて」
ラシ様にもそう言われ、無下に断る事も出来ず、奏人達の事をお願いした。
「さぁ、美味しいものを食べてきましょうね」
最初こそ戸惑っていた奏人。なかなか手を繋ごうとせず、嫌がる様子を見せていた。でも、にこやかに微笑み掛けてくれるラシ様に、次第に心を開いた様で、自分から手を繋ぐと、寺田さんや、マハーマ王太子達の後を追い掛けていった。
「trick or treat!!!」
「えっ⁉」
「だから、trick or treat!!!!お菓子くれないと悪戯するぞ‼」
「もうアツったら。子供じゃないでしょ」
「未央の前では子供だよ」
急に真面目な顔付きになり、熱を帯びた視線で見詰められ、胸がドキドキし、心拍数が一気に上がった。
「あっ、そうだ‼チョコならあるよ」
なんでこんなに動揺しているんだか。恥ずかしい。
「食べさせてよ。勿論、口移しで・・・」
ぞくっとするくらい大人の色気を纏う彼。いつも見せるパパの顔じゃない。夫として、僕を、妻として女性として求める彼の顔。
「ここじゃ流石に嫌か⁉じゃあ、おいで。いい場所がある」
アツに手首を握られ、そのまま連れて行かれたのは誰もいない礼拝の間。扉を後ろ手で閉めるなり抱き締められた。
「ここならいいだろ⁉誰にも邪魔されない。未央、お菓子ちょうだい」
彼にねだられ、チョコを渡すと、包みを開けて、僕の口の中に入れてくれた。甘くて美味しい。
「アツーーっふ・・・ん・・・」
すぐに彼の口唇が重なり、チョコをお互いの舌の上で転がすと、あっという間に蕩けてしまった。
「だめ・・・神様の前だよ・・・」
「我慢できない」
ふりふりのスカートの中に手を差し入れてくるアツ。
「下着身に付けてないの⁉」
驚きが、喜びにすぐ変わった。
「一応履いてます」
「こんなスケスケの、履いているうちに入らないよ」
「だって、ラシャサンが・・・その、倦怠期打破には・・・って、アツ、待って‼ダメ‼」
アツにそのまま横に抱き上げられ、近くの長椅子の上に座らせられた。
「未央、スカート上に持上げて」
彼のうるうるした瞳に弱い僕は、恥ずかしいのを必死で我慢して、言われた通りにした。アツは床に膝を立てて座ると、僕の脚を大きく広げ、その中心に顔を埋めようとした。
その時だった。
扉がバタンと開いたのは。
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