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第3話 僕と年上の友達

子供の頃、拓真以外にも一緒に遊んでいた男の子がいた。彼は僕らより年上で今は大学生。 長期の休みになると実家に帰ってくるみたいでたまに会ったりするけど… 「よう、安曇。久しぶり」 「…!えっ!蓮くん」 「あはは、また可愛くなったんじゃねーか?」 ワシャワシャと頭を撫でられると抱き締められる 「もー!帰ってくるたびに可愛い可愛いって…僕、男だって」 「ははは、悪い」 体を離すと笑って安曇の肩を軽く叩く くしゃくしゃになった髪を直しながら少し不満そうな顔を向けて突然現れた友人をみる 「拓真ならもうすぐ来ると思うけど」 「何?まだ拓真とくっついてねーのかよ?」 「はぁ?!な、な、何言ってんの?!」 突然の発言に思わず声が裏返って狼狽えてしまうが、そんなことはお構いなく蓮は続ける 「じゃあ、俺と付き合う?」 昔からからかうのが好きな人ではあったけど…会うたびに悪化しているような気がする 「え?」 「嘘だよ」 本気にすんなよとからかうように笑いながら安曇の背中を軽く叩いて 驚いた安曇も嘘だと言われホッとしたのか笑みを浮かべる それから、暫くして安曇よりも部室を遅く出た拓真が楽しそうに話す安曇を見つけて隣の男に首を傾げて 「あ、拓真」 後ろからやってきた拓真に気がつくと安曇が手を上げて拓真を呼び寄せる 「おう、拓真久しぶり」 「何だ、蓮か…髪型変わってたからわかんなかった」 「俺は髪型だけで判断されてんのかよ…今、安曇とも話してたんだけどどっか遊びに行かね?」 「部活ない日ならいいけど」 「んじゃ決まりだな」 楽しそうに話す蓮と拓真の姿に懐かしさを感じて一人密かに微笑む 「行く場所は俺と拓真で決めておくから安曇はお楽しみな」 「ん?うん、わかった…」 自分の言葉に安曇が頷くと拓真の肩に腕を回して安曇に笑顔を向けて 「よし、じゃあ俺たちこっちだからまたな安曇」 「あ、うん。二人ともまたね」 手を振って分かれ道を左に曲がって安曇が先に帰って行くのを蓮と拓真が見送りつつ拓真が小さくため息をつく 「また、何か企んでるのか?」 「企んでないって…お前らと遊びたいだけだよ」 「とか何とか言って安曇のことからかいに来ただけだろ?」 「何?俺と安曇が楽しそうにしてたからヤキモチでもやいてんのか?」 「そんなんじゃねーよ」 今度はこっちに矛先が向いたのがわかり、乗っけられていた蓮の腕を振り払うも歩き始める それに着いて歩く蓮は楽しそうに笑みを浮かべていて、拓真はその表情を怪しげに見つめる 「そんで、どこ行くんだ?」 「水族館」 もう決まってんのかよと内心思いつつも久しぶりに3人で出掛けるのが嬉しいのか少しソワソワしてしまう拓真 初めて拓真に安曇を紹介された時は女の子だと思った。3人でよく遊ぶようになって気が付いたのは安曇が拓真のことを好きだってこと。俺からすればあからさまだったけど拓真は気が付かないみたいで見てて歯痒かった。 「それが今も続いてるとはな…」 公園のベンチに座り二人がやって来るのを待ちながら、どうにかしてやれないかと考えていると先に安曇がやって来て隣に座る 「おはよう蓮くん、早いね」 「おはよ安曇。考え事してたらもう着いてただけだよ」 「考え事?」 「んー?可愛い安曇のこと」 さらりとからかう蓮にムスッとした表情を向けて軽く肩を小突いて 「もー、またからかう」 「からかってないって本当に可愛いと思ってるよ」 微笑みを浮かべたまま、こちらに恥ずかしげもなく言ってくる蓮をみてこちらが恥ずかしくなって顔を赤らめて俯く 「可愛くないってば…」 「可愛いって拓真好みの顔してるし。拓真も可愛いって言ってたぞ」 「えっ!?ホント?」 勢いよく顔を上げて蓮を見て期待に満ちた目を向ける 「拓真に可愛いって言われるのはいいのか…」 「ぅ…い、言われたことないし。拓真なら…ちょっと嬉しいかも…」 さらに顔を赤らめてモジモジと指を絡ませて呟き、もしも拓真に言われたらと考えると恥ずかしくて両手で顔を隠す 「わかりやすいなーホント…何で拓真はわかんねーのか不思議」 「拓真はモテるし僕のことなんか見てないよ」 「そんなわけあるか…もう、告白しちゃえよ」 蓮の言葉に大きく左右に首を振って真っ赤になったまま俯く 「む、む、むりだよ!僕、男だし…男からなんて気持ち悪がられるだけだよ」 「じゃあやっぱり俺にしとけば?」 「え?」 「俺、安曇のこと好きだよ」 にこっと笑う蓮の顔をキョトンと見つめていると拓真が公園にやって来て二人に近付く 「おはよう、悪い遅れた」 「だ、大丈夫!僕達も来たばっかりだし!」 慌ててベンチから立ち上がり蓮から距離をあけて俯く安曇の様子に蓮の方をみて、また何かやったのかと目で訴える拓真 「んじゃ、揃ったし行くか。男3人で水族館に」 目で訴えてくる拓真に笑顔を返すとベンチから立ち上がり歩き出す。蓮について行くように歩き出した安曇の顔を覗き込む拓真 「また、蓮にからかわれたか?」 「え?あー…大丈夫だよ。いつものことだし」 少し呆れ顔で聞いてきた拓真に笑みを返すと切り替えようと深呼吸を1つして蓮に近付き話しかける 「何で水族館?」 「俺が行きたかっただけ」 「だと思った」 後ろから二人が楽しそうに話す様子をみていた拓真は、小さくため息をつき二人を見守りつつ後ろを歩く 「わー、久し振りにきたけど色々増えてる!」 「最近、増築したらしいよ」 嬉しそうに大きな水槽を見上げる安曇の隣で一緒に水槽を眺める蓮 「子供の頃以来、来てなかったからちょっと新鮮かも」 子供のように目をキラキラさせながら水槽を眺めて歩く安曇の姿に、満足そうに笑みを浮かべる蓮の隣に拓真が並ぶと小さい声で話しかけて 「俺がくる前に何話してたんだ?安曇にまた、しょーもないこと言って困らせたんだろ?」 「しょーもなくねーよ。好きだよって言ったんだ」 「は?」 「好きな人と進展してないみたいだったからさ。俺にしとけば?って言っただけ」 しれっと言い放つ蓮に驚きつつも、朝の安曇の反応と好きな人というワードに胸がざわつき思わず蓮の腕を掴む 「ちょっと待て。どうゆう意味だ?それ」 「どうって何が?」 後ろを着いてこない二人を呼びにきた安曇が二人を見上げて不満そうに告げる 「もー何やってんの?二人でこそこそ話して」 「悪い悪い」 「おいてくからね」 ムスッとしたまま安曇がまた先を歩い それに、着いていこうと蓮も歩き出すが拓真は一人深刻そうな顔をして何かを考えている様子 「お前がそんなに気にするとは意外だ」 ほら、行くぞと考え込んだままの拓真の腕を掴んで安曇の元まで歩いて行く 屋外でやっているイルカショーを見終わり蓮が立ち上がると安曇と拓真が見上げて 「食べ物買ってくる。何がいい?」 「僕はあったかい飲み物がいいな」 「俺、ソフトクリーム」 「この寒空の下でアイスかよ…」 甘いもの好きな拓真に軽く呆れつつ近くにある売店へと歩いて行く 「拓真、よくアイスなんか食べれるね」 「アイスは、寒くても暑くても美味いからな」 ポケットから大きめのカイロを取り出すと安曇に手渡して 「寒いなら使えよ」 「有難う…あったかい」 拓真の優しさに笑みをこぼすとカイロを使って手を温め、冷たくなった頬にもカイロをくっつけてみる 「何これ幸せ…あったかい…」 「安曇…」 「ん?」 カイロの温かさに浸っていると隣にいる拓真から真剣な表情で声をかけられ、思わず背筋を伸ばして聞く 「悩みがあるなら俺が聞くから…」 「え?」 「蓮より俺を頼れ」 「う、うん…」 真剣な表情で言われてしまい頷くしかなかったが、突然「頼れ」なんて言い出した相手の真意がわからず首を傾げて 「どうしたの?突然」 「別に。蓮には恋愛相談とかしてんだなと思って…俺にはしてくれた事ないからさ」 「相談してるわけじゃないよ…」 流石に本人目の前にして恋愛相談は出来ないと内心ツッコミをいれつつも、さっき二人でコソコソ話してる時に何か聞いたのかと一人納得する 「確かに蓮は年上だし頼りになるところもあるけど…いつも側にいる俺の事も少しは頼って欲しいなって。蓮ばっかりずるい…」 「拓真…」 「俺だって安曇のこと好きだし」 突然の告白に思わず息を飲み一気に顔を赤くして拓真に見られないうちに勢いよく立ち上がる 「安曇?」 「ごめん!僕ちょっとトイレ!」 バタバタ走って行ってしまうと入れ替わりに蓮が食べ物を持って戻ってくる 「お前、何か言っただろ」 「は?何も言ってねぇし…好きって言っただけで」 「はー…天然タラシはこれだから…」 拓真の隣に座って買ってきたコーヒーを飲み拓真にはソフトクリームを渡す 「は?何だよそれ」 「何でもねーよ」 結局、二人は二度もイルカショーを見たという。

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