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第8話 僕とテスト明け

期末テストが終わればすぐに夏休み。無事テストも終わり、生徒達は浮かれて夏休みの計画を立て始めておりクラスの中はいつもより賑やか そんな中、安曇はテストの結果にホッとしつつ帰り支度をしていた (良かった赤点なくて…これで合宿行ける…) 賑やかな教室から出ると拓真と西川にばったり会う 「マネージャー、おっす」 「西川くん、おっす。あ、拓真勉強教えてくれて有難う。赤点なかったよ」 「そっか、良かったな」 嬉しそうに笑う安曇の頭を優しく撫でてあげると顔を赤くして俯いてしまう 「……っ」 「安曇、顔赤いぞ」 俯いた安曇の顔を覗き込んで赤くなっている顔をニヤニヤ笑いながら眺める 「うっ…」 覗き込まれて恥ずかしくなり西川の後ろにささっと隠れて少し拓真を睨む その様子に巻き込まれ気味の西川はため息をついて 「拓真、マネージャーいじめんなよ」 「いじめてないって」 嫌われていないと言うことがわかったからか、反応が全て楽しくてついいじりたくなってしまう。 あまりすると怒られるので1日1回と拓真の中で自分ルールが決まっていた。 「今日はもうしない」 「今日はって…」 そう呟くとさっさと体育館の方に拓真は歩いて行ってしまう。後ろで隠れている安曇は小さく息を吐くと西川の隣に並んで拓真の後ろ姿をみる 「最近、よく絡むな…なんかあった?」 「わかんない…けど、前と違って嬉しそうな感じする」 「それって…」 拓真が安曇に嫌われていないことを自覚したからかと西川は思ったが、安曇にはまだ何だかわかってないようで首を傾げている 「マネージャーから触って見たら?」 「え?何で?」 「多分、喜ぶ」 テストが終わったので部活も再開し、放課後の部活動の声が色んなところから聞こえてくる 安曇は皆んなが脱いだジャージをたたみつつ部活の様子をチラチラとみる パス練からシュート練習に変わり、ボールがこちらに飛んでくると手慣れた様子でパスして渡す (拓真、テスト前からちょっと変だけど…なんかいつもご機嫌だし) テスト勉強中もこちらを見つめてきたり、問題が解けると頭を撫でてきたりといつもしないようなスキンシップが増えた気がしていた。 彼女でも出来たのかと思ったが、女の子と特別仲良くしているわけでもない様子なので安曇には何だか分からない。 シュート練習が終わると休憩になり、皆んなにタオルや飲み物を配る。 「はい、どうぞ」 「サンキュー、マネージャー」 コートではふざけて遠くからボールをリングに入れようとしている部員達がおり、手が滑って凄い勢いのボールが安曇に狙って飛んでいく 「あ、やべ」 「マネージャー避けて!」 「え?」 安曇が振り向くと同時にパァンと大きな音が聞こえ大きな掌が間近にあり、その手にはボールが掴まれている 「っ!」 「あぶねーだろ。人がいないとこでやれ」 横をチラリと見るとボールをとったのは拓真で、手にしたボールをコート内にいる部員に投げ渡すと安曇に目を向ける 「大丈夫か?安曇」 「……」 ぺたりとその場にしゃがんだ安曇に驚き拓真が慌ててしゃがむ 「おい、大丈夫か?」 「へ、平気…驚いて…有難う」 苦笑いを浮かべて心配そうに見る拓真に告げると、再び立ち上がりタオルと飲み物を配る (ビックリした…) ボールに当たりそうになった驚きと、また拓真に助けられた驚きが混じってドキドキと心臓が速く脈打つ (あーダメだ…惚れ直すほどカッコいい…) 子供の頃、拓真に助けられた感覚に似ていて恥ずかしくて拓真を直視出来ない。 先程、ボールを投げた部員達が近寄ってきて安曇に頭を下げて謝る 「ごめん、マネージャー」 「良かった当たらなくて…大丈夫?」 「え?うん、大丈夫。寸前で助けてもらっ…たから」 助けてもらったシーンがフラッシュバックして一気に耳まで真っ赤になり黙ってしまう 部員達が心配そうにマネージャーをみて声をかける 「マネージャー大丈夫?」 「だ、大丈夫…顔洗ってくる」 体育館から出て廊下を歩いた先にある水道に向かい、水を出して顔をバシャバシャと洗う 深呼吸して息を整えタオルで顔を拭く 「…はぁ…これ以上好きになったって叶わないのに…」 拓真には好きな人がいて、自分は男で恋愛対象ではないのだからと言い聞かせて気持ちを落ち着かせると体育館へと戻る 体育館に戻るとまた練習を再開して安曇はマネージャーの仕事に専念してあまり考えないようにしていた 部活も終わりが近付くと顧問の先生が皆んなに合宿の日時が書かれたプリントをいくつか配り説明を始める 「今、配ったのは夏休み中のバスケ部の練習日程だ。合宿のことも書いてあるからよく読んでおくように。行けないやつは今のうちに言っておけよ。分からないことあったら聞いてくれ。じゃあ今日は解散」 「お疲れ様でしたー」 それぞれ片付けを始め安曇も手伝い着替えて拓真より先に体育館から出ていく 先程、貰ったプリントを読みながら歩いていると人とぶつかってしまう 「わっ!ご、ごめんなさいっ」 「どこみてんだ?」 「本当にごめんなさい!」 「ふふっ」 ぶつかった相手が急に笑い出したので下げていた頭を上げて様子を見ると、見慣れた友人の姿 「あ、蓮くん」 「ふふふっ。ごめん安曇…ビックリした?」 「した…」 怖い人じゃなくてホッとして、蓮に会えた嬉しさからか笑みを漏らすと思わず抱き着く 「うわっ…何?どうしたの?」 急に抱きついてきた安曇にドキッとするが、理由は1つしかないため優しく頭を撫でる 「拓真がカッコ良すぎて辛い」 「…安曇、それは本人に言ってやれよ」 「無理…」 よしよしと安曇の背中を撫でてあげていると、他のバスケ部員たちもゾロゾロと出て来たのが見えて安曇の体を離す 「安曇、今日は夏休みの予定を聞きに来たんだよ」 「予定?」 少し落ち着いたのか素直に離れて、蓮の言葉に自分が持っていたプリントを蓮に見せる 「これ、バスケ部の予定表。この日以外なら今のところ空いてるよ」 蓮に予定表を見せているとゾロゾロとバスケ部の部員達が歩いて通り過ぎ、マネージャーに一声かけつつ帰っていく 「マネージャーおつー」 「お疲れ様ー」 笑顔で手を振っていると西川と拓真が歩いてくるのが見えて、慌ててプリントを見ていた蓮の後ろに隠れる 「わっ、何?」 「拓真、俺先に帰るな。お疲れ」 「おう、お疲れー」 西川が小走りでその場から離れていくと拓真が蓮の前まできて、後ろに隠れている安曇を覗き込み 「安曇、何やってんの?」 「お前、なんかやったのか?」 「何にもしてねーよ…蓮はここで何やってんだよ」 「お前らの予定を聞きにきたんだよ。あと安曇とスキンシップしに」 今だに蓮の後ろに隠れている安曇に不機嫌そうな顔をすると、安曇を捕まえようと蓮の後ろに回り込む 安曇は逃げるように蓮の前に移動してまた隠れる 暫く蓮を盾にしてグルグルと鬼ごっこをしていたが、前に安曇が来た時に蓮が捕まえてくるっと前を向かせて拓真の前に突き出す 「俺を盾にして何やってんだ?」 「わわっ!」 「安曇…逃げんな」 真っ赤になっている顔を見られないように拓真の目元を抑えて目隠しをしてしまう 「こら、離せ…」 「やだ…」 目を隠している両手を掴んで剥がそうとするが、凄い力で押さえつけられておりなかなかとれない。顔をずらしてもとれないため安曇の脇辺りをこちょこちょとくすぐる 「あはっあはははっ…ちょっ拓真あははっやめてぇ」 くすぐったくて手の力も緩み、笑いながら拓真の胸板に顔を埋め手で拓真の胸板を叩きやめろと抗議する 拓真が手を離すとハァハァと息を切らせ胸板に顔を埋めたまま息を整えると、ゆっくり顔を上げて拓真を軽く睨む 「俺から逃げた罰な」 拓真は睨みつける安曇にニヤリと笑うと頭をワシャワシャ撫でまわす その二人の様子を見ていた蓮は呆れながら眺めている (こいつら何で今だに付き合ってないんだろ…) 髪をボサボサにされてムスッとしている安曇を後ろから、ぎゅっと抱きしめると耳元で囁く 「安曇、俺も構ってくれよ。拓真ばっかりずるい」 「うぅ~…蓮くん耳はやめてよー…」 「安曇は昔から耳弱いな」 耳元で喋られて背筋がゾワゾワと寒気を感じ安曇は思わず目をぎゅっと瞑る 「蓮、用が済んだんならとっとと帰れよ」 蓮のセクハラ行為にイラつき蓮の頭を掴んでやめさせようとするが、拓真の方を向くとニヤニヤ笑い安曇の頬に軽くキスすると安曇から離れる 「好きだよ安曇」 「っ!」 拓真は蓮の胸倉を掴んでそのまま壁に突きつけ睨みつける 「いって…何?拓真」 「どうゆうつもりだ?」 「何が?言ったよな安曇とスキンシップするために来たって」 「ふざけるなよ…」 蓮を睨みつけて力を込めて壁に押し付けるが、蓮が拓真の胸倉を掴み自分の方へ引き寄せて耳元で囁く 「安曇だって、いつまでもお前のこと見てるとは限らないだろ?拓真が何もしないなら俺がお前を忘れるくらい愛してやるさ」 「蓮、テメェ…」 「ちょっちょっと二人共喧嘩はやめてよ」 急にケンカを始めた二人に慌てて安曇が止めに入るが、二人はこちらを見ずに睨み合っている 「ヘタレには負ける気しねぇよ」 拓真の胸倉押してその場から離すと鼻で笑い、安曇に笑顔を向けて頭を撫でる 「大丈夫、ケンカじゃないから」 手に持っていた予定表を安曇に返すとカバンを持って二人から離れる 「夏休みになったらまた連絡するわ。じゃーな」 二人とは反対の方向へと歩いて行ってしまう蓮。安曇は二人を交互にみて慌てるが、拓真に近付き顔を覗き込む 「拓真、大丈夫?」 顔をしかめて悔しそうな表情をしている拓真に、安曇は何と声をかけたらいいか迷っていると拓真に手を握られドキッとして顔を向ける 「拓真…」 先程、蓮にキスされた場所に拓真も軽くキスして安曇の瞳をじっと見つめる 「安曇、俺…お前と友達やめる」 「え?」 「蓮には渡さない…」 とても真面目な顔で安曇を見つめてから、手を離すと安曇から離れて帰り道を歩いて行く その後ろ姿を見つめながら安曇は今、起きた事をぐるぐると考えていた。二人がケンカしていた時、何を話していたかわからなかったが自分に関係する事なのは何となく察することが出来た。 二人からキスされた頬を手で押さえると、二人がそれぞれ歩いて行った方向をキョロキョロと見てため息を漏らす 「何が何だかわかんないよ…」

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