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第13話 僕と迷い事
「どうしよう…いつ言おう…」
拓真の好きな人を聞いた翌日、安曇は拓真に返事をするべく二人きりになるチャンスを窺っていた。
朝は起きてからすぐに朝練があり、近くにはいるが休憩も短く怪我人が数人いたため手当てに時間をとられ会話もしていない。唯一したのは“おはよう”と挨拶を交わしただけである。
今はお昼だが、食事をした後はまた練習なので会話をする暇はなさそうだと予感していた。
「夜しか…」
しかし、夜は夜で部屋が違うため滅多に会うことはない。
「呼び出し…」
目の前の携帯を見つめ夜の約束をしようか迷い悶々としているうちに昼休みも終わってしまい携帯を手にして体育館へと歩き出す。
「別に今日でなくても…」
合宿は明日で終わり夕方には家に到着する。次に会えるのは翌日の部活の時間。
顔を合わせているのに返事を先延ばしにするのは返答に困っていると思われないだろうかとふと頭をよぎる。
「…勘違いされるのはヤダな」
答えはとうの昔に出ていて長年言えなかった気持ちを伝えられるチャンスなのだ。
「やっぱり早めに言おう」
心に決めると足を速めて体育館へと入り部活の準備を始める。
部活が始まり不安でモヤモヤした気持ちを忘れるかのように真面目に練習する拓真
「なぁ拓真、今日のマネージャー変じゃね?」
シュート練習をしていた拓真にそろっと近寄り話しかける西川に怪訝そうな表情を向ける。今はあまり安曇を見られる気分ではなかったが、変だと言われれば気になり目を向ける。
安曇は体育館の出入口付近に座っているが、その表情は曇ったり晴れたり照れたりと百面相をしている。
「…そうだな」
恐らく自分が好きだと言ったせいなのだろうと容易に想像がついたが、それを西川に言えるはずもなくとりあえず同意する。
「いつも以上に変だな…」
西川が首を傾げてから横にいる拓真の顔をみると、いつもなら心配そうな表情か同じように首を傾げたりするのだが、今日は眉間にシワを寄せて小さくため息を漏らしている拓真の様子に、二人の間に何かあったんだなと察して一人納得する西川
「マネージャーとなんかあった?」
答えないだろうとわかってはいるが、好奇心もありとりあえず聞いてみる。
「はぁ?何にもねぇよ」
案の定わかりやすく態度に出されて西川は小さくため息つく
「喧嘩したんなら早めに仲直りしとけよ」
「ちが……」
違うと訂正しようとしたが、じゃあ何?と聞かれると答えられないので慌てて口を閉じる拓真
「そのうちな」
西川に背を向けてドリブルしながらリングの方へと走って行ってしまう拓真を見送り、もう1度小さくため息をつく西川
「全く…手がかかるな…」
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