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第19話 四杯目(1)

 ホワイトさんから貰った白いフレンチドレッシングは、夕飯に出したサラダに使ってみたら、母さんも征史郎にも大人気だった。小さいボトルだったせいもあって、すぐに使い切ってしまった。正直にドレッシングの値段を言ったら、二人ともびっくりして、ありがたがってもいたけれど、一回で食べきってしまったことを残念がってもいた。 「俺、お小遣いで買いに行こうかな」  征史郎がボトルを見ながら呟くくらいに気に入ったとは、予想外だった。しかし、さすがに高いから、うちでは普段使いには買うことはないだろうな、と思う。だけど、ゆで卵をいただいてたこともあるし、お礼も兼ねて、今度、買って帰ろうかな、と、チラリと思った。  夜勤明けの翌日、ドレッシングの感想を伝えるのも兼ねて、いつも通りにカフェ・ボニータに行くと、今日は見覚えのない女の子のスタッフがカウンターに入っていた。 「カフェオレと餡バタートースト、お願いします」 「はい、カフェオレはマグカップでよろしいですか?」 「あ、はい」  注文をした後、俺はホワイトさんがいないか、チラチラと周りを見回す。だけど、今日はもう一人、別の男の子のスタッフが入ってるだけだ。  「ではカフェオレはこちらで……番号札三番でお待ちください」  まさにマニュアル通りの言い回しで、差し出されたトレーを受け取り、なんとなく寂しく感じる俺。まぁ、今までが、普通じゃなかったんだしな、と苦笑いしながら、いつもの指定席へと向かった。  次の日も、その次の日も、ホワイトさんの姿は見かけなかった。何かあったんだろうか?と心配にはなったが、俺がそれを聞くのも、なんだかおかしい気もした。運悪く、顔見知りの女の子のスタッフも見当たらない。彼女がいれば、ちょっと聞くこともできたんだけどな、と思いながらも、俺は餡バタートーストを齧る。  ここ最近、朝は女の子と男の子のスタッフが続いている。二人とも俺とそう年が変わらないように見えるが、この時間に連続で入ってるからには、学生ではないんだろうか。どことなく、ぎこちないというか、それこそマニュアル通り過ぎて、なんとなく素っ気ない感じがする。いつもの女の子のほうが、柔らかい感じがして、客としてはいい感じなんだけど。  そんな風に考えながらカウンターの方を見ていると、不意に、ホットミルクを頼むなら、今だったかっ!と、思った。本当に、今更だけど。 「ああ、失敗した」  すでにトレーの上は綺麗に食べ終えてしまった。さすがに、この上、ホットミルクはないか。俺は大きくため息をついて、明日こそはホットミルク!と思ったが、明日は久しぶりに休みなのを思い出す。 「……わざわざホットミルク飲みにここに来るのもなぁ……」  俺はチラリと混みだしているカウンターへと目を向けながら、ぼーっと見つめ続けた。

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