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第55話 八杯目(4)
その一方で。夜の営みだけど。
「あっ、あんっ、ンッ」
俺たち、別々の部屋があるけど、寝る時はいつもルーカスさんの部屋。そっちのほうが広いというのもあるけど……何よりも、ベッドがデカい。モノトーンで揃えられた部屋は、前に連れて行ってもらった部屋を思い出させる。
「はっ、あんっ、る、るーかすっ」
「何だいっ、セイッ」
「あ、イイッ、きもちぃっ」
「……フッ、俺もっ、気持ちいいよ」
背後から抱きしめるように、俺の耳元で甘く囁く。その声だけで、イキそうになる。
この部屋に越してきた当日、俺は初めてルーカスさんに抱かれた。引っ越すまでに、何度か、ルーカスさんの部屋に遊びにいっては、互いの身体を慰め合うくらいはしてたけど、最後までは、ルーカスさんがずっと我慢してくれて。俺のほうの覚悟、みたいなのを待ってくれてたんだと思う。
「んんんンッ」
「ここだろ? セイのいいところは」
互いに汗だくになりながら、ルーカスさんは笑みを浮かべて俺の身体を弄っていく。激しく穿ちながら、俺を強く抱きしめる。その力強さに、俺は悦びの声が身体中から溢れそうになる。
こうして抱き合ってる時だけ、ルーカスさんは俺のことを『セイ』と呼ぶ。今まで、そんな風に呼ぶ人はいなかった。元カノですら『征一郎くん』くらい。
だからなのか、そう呼ばれるだけで、俺の身体中がルーカスさん大好きモードに変わってしまう。もう、大好きすぎて、自分でもおかしくなっている気がする。
「ひやぁっ、ああっ、あっ、アァッ」
「んっ、いい、いいよ、セイ」
毎晩ではないけど、かなりの頻度で抱かれてる俺。ルーカスさんの情欲に染まった濃くて青い目に見つめられて、時には意地悪く、時には甘い囁きが、耳から身体の中へと流れ込む。ただそれだけで、俺の心も身体も、ルーカスさんのために変わっていく。
身体は正直、しんどい。十分、体力があると思ってた俺だけど、受ける側なせいなのか、気が付けば気を失うように眠ってることのほうが多い。逆に、どんだけ絶倫なんだよ、ルーカスさん、ってことなんだろうけど。
「あっ、あ」
もう、声が嗄れて、顔も涙や涎でドロドロなのに、ルーカスさんの動きは止まらない。俺の方は何度もイカされて、朦朧としてるってのに。
「っく、何考えて、るのっ……余裕あるねっ」
「うぁっ、ああああっ」
余裕なんかないっ。考えてるのは、ルーカスさんのことだけっ。
それなのに、言い返す言葉なんか出てこない。ただ、ひたすら喘ぐしかない。薄暗い部屋の中は、俺の嬌声とともに、互いの肌がぶつかる音と淫らな水音が響いてる。
「ああっ……やっぱりっ……可愛い……セイ、愛してるよっ」
「あっ、あっ……ひゃぁぁぁっ」
俺も愛してる。
あまりにも激しい快感に、その言葉を口にすることなく、俺の意識は飛んでしまうのだった。
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