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virgin suicide :運命の出逢い4

*** 「ここがおまえのデスク。一応、僕の隣」 「ここが、ですか……?」    手にしているダンボールを置きたいのは山々なれど、机の上にはファイルやら書類等が、これでもかと山積みされている状態だった。仕方なく椅子の上に、そっとダンボールを置く。     横に視線を移すと隣の山上先輩のデスクも同じように、いろんな物が山積みとなっている。 「山上先輩、俺の机の書類の山はいったい?」  顔を引きつらせながら、恐るおそる山上先輩に訊ねてみた。    書類の端々から覗く(始末書)の文字と一緒に、山上先輩の名前がしっかりと見えている。明らかに山上先輩の書類なのに、どうして俺のデスクに、こんなに置かれているのだろう。 「おまえがいない間に、僕がこなした仕事の数々。犯人逮捕したら、当然書類を作成しなきゃならないだろ?」 「そうですね……」 「水野は無駄に講習受けてるんだから、書類作成だってお手のもの。だよな?」 「はぁ。習ったので一応、できますが」    イヤイヤ答える俺に、山上先輩は涼しげな一重瞼を一瞬細めて、これでもかと嬉しそうな表情を浮かべ、俺の背中を力強くバシバシッと2度叩いた。それが痛いのなんの――俺の背中は、お布団じゃないってば! 「おまえがいない間、僕は激務をこなした。ということでデスクワークくらい、水野はへっちゃらだよなぁ」  楽しそう山上先輩は言い放ち、足取り軽くスキップしながら、どこかへ行ってしまった。 「へっちゃらなワケ、ないじゃないか……」  膨大な書類を前に私物の整理をする気力が、一気に削がれてしまった。間違いなく隣にある、山上先輩のデスクの書類も俺がやらねばなるまい。 「山上家の力を……無視したツケがこれなのか!?」  しかし頼ったところで楽をした分だけ超絶こき使われてしまい、お釣りが返ってくる気が激しくする。  山上先輩はここぞとばかりに俺を、自分の手足として使うだろう。その足で僕のために働けよと、言い放った人なんだから。あのときにおかしなヤツだと、どうして俺も気がつかなかったのか。 「結局、あの人の元で働く時点で、苦労が待ってるということ。なんだな……」    はあぁと深いため息をついてから、いそいそ私物の整理を始めた。先の見えないデスクワークに、一抹の不安を抱えながら。

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