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virgin suicide :欲望の夜

***  ――仕事がしにくい。 「…………」  山上先輩は暇なんだろうか? なぜかずっと、こっちを見ているし。 「…………」  俺の顔をずっと見ていて、飽きてこないんだろうか? 「…………」 「山上先輩あの、気が散るんですけど……」  なんのチェックをしてるんだか知らないけど、本当に気になってしょうがない。  どこか、刺すような視線――山上先輩のグサグサッと体を突き刺す視線を、毎日浴びていた。そんな感じでずっと見られる状態で仕事をするのは、非常につらい。 「水野が書類の書き間違えをしないように、無言のプレッシャーをかけていただけだから」 (――なんだよそれ、ただの嫌がらせじゃないか) 「それはどうも、ありがとうございます!」  使っているボールペンが、ミシミシ軋むような音をたてた。山上先輩の視線ってば、あからさまな嫌がらせじゃないか。 「これくらいのプレッシャーに負けていたら、いざというときに役に立たないからさ」 「はぁ、肝に銘じておきますね」  にっこり笑う山上先輩に、額にコッソリ青筋立てながら、俺も必死に笑って答えた。傍から見たら、とても仲のいい関係に見えるだろう。面倒見のいい先輩が、後輩をかわいがってる、そんな感じ。 「なのに実際は真逆とか、巧妙過ぎるだろ、まったく!」    そしてこの人と喋ってるだけで、本当に倍の神経を遣う。もう気を遣うレベルを、とうに超えているよ。    呆れ顔をしたまま山上先輩から注がれる視線をスルーして、黙々と書類をこなすことに専念した。    当の本人は携帯を弄ったり、フラフラ出掛けたり(煙草を吸ってるらしい)俺を監視したりと、毎日過ごしていた。

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