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virgin suicide :貴方との距離4

*** 「水野っ、何やってんだ! このボケっ!」 「すみません、すみませんっ!」  今日も山上先輩の怒鳴り声が、俺の耳に、重く響き渡る……    自分の気持ちに気づいて、既に二ヶ月が経過しようとしていた。山上先輩との関係も進展なく、先輩後輩の仲のまま。 「お前の不注意で現場が荒れるってことが、いつになったら分かるんだ。焦ったって、何も出てこないからな!」    涼しげな一重瞼が、じっと俺を見る。心底、呆れた眼差し……そんな眼差しなのに見られるだけで、心拍数が勝手に上昇する。    ヤバい、相当重症だ―― 「まるで水野の保護者だよ、僕は。本当に心配で、目が離せない」    俺の首根っこを、ぎゅっと右手で掴んだまま、大きなため息をつく。山上先輩の足手まといになりたくなくて、つい焦ってしまう自分。    想いと一緒に空回りしてるムダな姿が、すごく悔しい。 「いい加減、離して下さい……」    肌に触れている山上先輩の手の温度に、余計ドキドキしてしまう。自分の恋心に気がついてからというもの、悟られないよう必死になっていた。 「動くなよ。僕の命令は、絶対だからな?」 「動きません、絶対に!」    おどおどしながら言い、上目遣いで山上先輩を見ると、パッと手を離して、 「嫌われたもんだね、僕は……」    ポツリとこぼして、一人で現場に行く後姿。    ――また、傷つけてしまった。 「変に距離を置こうとして意識しちゃうのが、山上先輩にとってダメなの、分かってるのに……」    不器用な俺は山上先輩を、これでもかと傷つけてしまう。    ――ホントは、好きなのに――    仕事同様、恋愛も宙ぶらりん。佇んでるだけで、精一杯だった。    この想いを告げてしまったらきっと俺は、ひとりで立っていられなくなる。山上先輩に溺れてしまいそうで、本当に怖くて……    だから尚更、この距離感を維持しようと、もがいていたのだった。

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