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virgin suicide :貴方との距離4
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「水野っ、なにやってんだ! このボケっ!」
「すみません、すみませんっ!」
(今日も山上先輩の怒鳴り声が、俺の耳に、重く響き渡る……)
自分の気持ちに気づいて、既に二ヶ月が経過しようとしていた。山上先輩との関係もあれから進展なく、先輩後輩の仲のままを維持している。
「おまえの不注意で現場が荒れるってことが、いつになったらわかるんだ。焦ったって、なにも出てこないからな!」
涼しげな一重瞼が、じっと俺を見る。心底、呆れた眼差し……そんな眼差しなのに見られるだけで、心拍数が勝手に上昇する。ヤバい、相当重症だと思われる――。
「まるで水野の保護者だよ、僕は。本当に心配で、目が離せない」
俺の首根っこをぎゅっと右手で掴んだまま、大きなため息をつく。山上先輩の足手まといになりたくなくて、つい焦ってしまう。想いと一緒に空回りしてるムダな自分の姿が、すごく悔しい。
「山上先輩、いい加減に離してください……」
肌に触れている山上先輩の手の温度に、余計ドキドキしてしまう。自分の恋心に気がついてからというもの、悟られないよう必死になっていた。
「動くなよ。僕の命令は、絶対だからな?」
「動きません、絶対に!」
おどおどしながら言い放って上目遣いで山上先輩を見ると、俺からパッと手を離した。
「嫌われたもんだね、僕は……」
ポツリとこぼして、一人で現場に行く山上先輩の後ろ姿。
(ああ――また傷つけてしまった)
「変に距離を置こうとして意識しちゃうのが、山上先輩にとってダメなの、わかっているのに……」
不器用な俺は山上先輩を、これでもかと傷つけてしまう。ホントは、すごく好きなのに。仕事同様に、恋愛も宙ぶらりん。佇むだけで、精一杯だった。
この想いを告げてしまったらきっと俺は、ひとりで立っていられなくなる。山上先輩に溺れてしまいそうで、本当に怖くて。だから尚更この距離感を維持しようと、もがいてしまうのだった。
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