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virgin suicide :想いが重なる夜2

***  捜査会議……どころではない。さっきから山上先輩は、まったく落ち着きなくて貧乏ゆすりを激しくしたり、手にしているボールペンを無駄にカチカチしたり……。隣でその様子を見ているだけで、俺はハラハラするしかなくて、この後のことを考えると頭が痛くなった。   (――ううっ、会議内容がまったく頭に入ってこないよ) 「こら、山上! さっきから体をゆさゆさと揺さぶって、トイレに行きたいのか?」 「違いま~す。このヤマにワクワクしちゃって、すっごく体がウズウズしているだけです」    そう言って、山上先輩は俺の顔をガン見した。視線がどうにも痛くて、慌てて目を逸らすしかない。 「目障りだから、大人しくしてろ。捜査中もだぞ」 「大丈夫ですよ~。最近始末書、書いてないし」 「そういえば……」    本部長同様に、他の刑事たちもヒソヒソなにかを話している。 「僕、チームワークの大切さがどんなに大事か、今頃になってわかったんです。なっ、水野くん?」  無邪気に笑いながら、俺の肩をポンポン叩いた。話を振らないで欲しいよ。いろいろ複雑だから。新米の俺がムダに足を引っ張っているせいで、面倒を見ている山上先輩が自由に動けないだけなのだ。 「とにかく。じっとしていろ、わかったな?」 「了解で~す!」  山上先輩は胡散臭い敬礼してからゆっくりと頬杖をつき、前を向いた。そして机に置いてある書類にいそいそなにかを書き込み始める。 「……それで、五丁目近辺の地取りについて」    本部長が話を戻して説明し出した途端に、勢いよく手をあげる。 「その地取り、僕やってます。今日中に報告書にまとめて、すぐに提出します!」    いつも以上に元気な感じで、山上先輩が生き生きと答えた。常にべったりしていたワケじゃなかったけど、この人いつの間にそんな仕事をしていたんだろう? 「相変わらず仕事早いな。助かる」  本部長が満足げにほほ笑み、話を再開した。 「とっとと書類を終わらせて、僕のヤマの捜査しなきゃ。な、水野くん?」  俺の耳元で、色っぽく囁く山上先輩。逃げ出したい感、満載である。 「だからおまえは、会議内容をしっかりとメモしておけよ。僕のために……。じゃないとどうなるか。わかるよな?」  恐怖でコクコク頷く俺に、山上先輩は不敵な笑顔を浮かべながら、サクサクと仕事をこなしたのだった。

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