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virgin suicide :守りたい

*** 「これで、よしっと!」  お互い、想いを告げて数日経った。仕事の忙しさは相変わらずだったけど、職場恋愛なので逢えなくなることはないし、仕事が終わってからどちらかの家で一緒に過ごすのが、日常となっていた。    実はさっきまで山上先輩と俺の家にいたのだけれど、進みの悪い自分の仕事をさっさと片付けるべく、早めに出社して頑張っている最中だったりする。  書類にミスがないか最終確認していると、大きな手が労わるように優しく頭に乗せられた。その大きさと温もりで誰なのかすぐにわかり、嬉しさを噛み締めながら上目遣いでその相手を見上げた。 「おはようございます、山上先輩……」 「おはよ、水野。少しは進んだか?」  眠そうな目をして、わざわざ俺の顔をじっと覗き込む。 「はい、すべてのチェックが終わったら、本部に提出してきます」    ドキドキを隠すべく、思わず早口で言ってしまった。   (イヤだな……さっきまで一緒だったのに、相変わらず心拍数が上がるなんて) 「悪いけどその足で、隣のコーヒーショップに行って、今日のコーヒー頼むわ。もちろん、おまえの金でな」  坊っちゃまのくせに、変なところにケチ臭い。とは言えない――。 「わかりました」 「水野といると万年寝不足になるよ……ホント参ったなぁ」  参ったなぁと言いつつその口振りがどこか嬉しそうで、つられて俺が笑っていると突然、なにかを投げつけた山上先輩。 「わっ! 危ないじゃないですかっ」    慌ててキャッチしたのは、山上先輩のスマホだった。 「なに、呑気に笑ってるんだ。ムカつくなぁ、おまえ……」  山上先輩は苦笑いして、俺の耳元でコソッと話す。 「暇そうな水野くんに、僕からのミッション。そこに載ってる女の名前をデリートしないと、もれなく浮気しちゃうかも?」  俺がギョッとして山上先輩の顔を見ると、ニヤリと笑ってからくるりと背を向けた。 「ちょっと、関んトコに行ってくる。是非とも頑張って、ミッションをこなしてくれたまえ!」  右手をヒラヒラ振って捜査一課から出て行く背中に、アッカンベーをしてやった。 (ムカつくのは、こっちだよ……これってなんだか、都合のいい男みたいじゃないか。断れないのがわかってて頼むんだから、もう!) 「ああ、もう。さっさと片付けないと、自分の仕事が進まなくなってしまう……」    せっかく早朝出勤して仕事をこなしたのに、なぜか倍になって仕事が舞い込むなんて最悪。慌ててデスクにかじりついて、仕事の続きをしたのだった。

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