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virgin suicide :守りたい3
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ミッションを無事にクリアして、自分の仕事をサクサク進めていると――。
「ただいま……」
疲れた声を出して、山上先輩が肩を落としながら戻って来た。そして自分のデスクをまじまじと見てから、むーっと低い声で唸って何度か首を傾げる。
「お帰りなさい。どうかしましたか?」
「……水野さ、席を外してたのって、どれくらいの時間?」
俺は頬杖をついて、過去を遡る。
「えっと書類を本部に提出して、お店に行く前にトイレ済ませたあと、店の往復をしたから15分くらいだと思います」
「その間、他の奴らは会議室や捜査で、それぞれ出払ってるんだよな……」
「山上先輩のデスク、なにか盗られた物でもあるんですか? いつもと、変わらない気がしますけど……」
いつもと違うのは、冷めたコーヒーカップが1つあるくらい。
「ごちゃごちゃしてるようで、僕なりの法則が実はあるんだよ」
そう言って前方に置いてあるペン立てから、がさごそとなにかを引っ張り出した。
「……防犯カメラ!?」
「ここが警察だからって、なにが起こるかわからないだろう。画像見に、ちょっと鑑識に行ってくる。悪いけど僕が戻るまで、席を立たないでくれるか?」
心配して山上先輩を見上げる俺に、誰もいないのを確認してから素早くキスしていく。それだけで心があっという間に、落ち着いてしまうから不思議だ。
「直ぐに戻るからトイレ、我慢しておけよ」
踵を返して、出て行った山上先輩。そんなセリフを言われたら、なんだかトイレに行きたくなったかも……。
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