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virgin suicide :守りたい8
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向かった捜査本部で、頼まれたデスクワークを黙々とこなしている最中だった。
「水野、ちょっと抜けるわ。タバコ吸って、頭をしっかりと冷やしてくる」
さっきの怒りがどうしてもおさまらない怒りまくりの山上先輩は、機敏な動作で本部から出て行った。
「ごめんね、山上先輩……」
俺が呑気に、キツネ顔の男と喋ったりしたから。まさか、デスクを荒らした犯人だったなんて、思いもよらずに。
「山上はいるか?」
上座から本部長が、山上先輩を捜している。
「すみません。今ちょっと、席を外してますっ!」
俺は片手を上げて大きな声で言うと、本部長が靴音を立ててこちらに駆け寄って来た。
「さっき、提出してもらった書類なんだが……ここ、珍しく抜けがあって」
俺が覗き込んで確認してみると、普段ならしないような、ちょっと変わったミスをしていた。怒りを心に抱えたまま、仕事をしていたせいかもしれない。
「さっき見た資料があれば俺でもできますけど、修正を施しましょうか?」
「悪いが、急いで仕上げてくれ」
「わかりました」
書類を受け取ると、本部長が肩に手を置いてきた。ずしっとした重みのあるそれに、ちょっとだけ緊張してしまう。
「最近、めっきりと頼もしくなったな。期待しているよ」
一言告げたと思ったら、颯爽と元の場所へ戻って行く。
山上先輩のおかげで、俺は強くなれている。以前よりもしっかり仕事ができるようになったことに、きちんと感謝しなきゃいけないよね。
山上先輩がさっき出て行った扉を見てから、急いで資料を取り出し、書類の直しにかかった。こうしてリカバリーできるようになった自分を、誇らしく思いながら――。
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