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Imitation Black:切ない別離

 いつも通りの月曜の朝。    重い体を引きずるように教室に入り、自分の席に座った。  ふと左斜め前を見やる。    山上がいつもと変わらずに、クラスのヤツらと楽しそうに談笑していた。そのイミテーションな横顔を見ただけで、胸がきゅっと痛くなる。  下唇を噛み、痛みに耐えていると、いつの間にかホームルームを知らせるチャイムが鳴る。  そこで、やっと気がついた。  いつも通りの朝だけど、何かが違っていることに……山上が、挨拶をしてこなかったんだ。  いつもなら俺が席に座ると目ざとく気がつき、柔らかい微笑みを浮かべながら、挨拶してきたのに。    今日は振り返ることもなく、前を向いたまま談笑していた山上。  挨拶がなかった、ただそれだけのことで、どうしてこんなに心が沈むんだよ。そもそも原因を作ったのは、自分自身じゃないか。 『お前なんか、大っ嫌いだ。もう、俺に近づくな!』  そう言った相手に、いつも通り挨拶するワケがないだろう。    当たり前のことなのに……めちゃくちゃつらい。  普段と変わらず、担任の話を真剣に聞いている山上の横顔を見るのが何ともいえず、とても切なかった。

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