57 / 123

Scarface:突然の出逢い3

*** 『ヨロシク頼む。仲良くしような』なぁんて言われて、素直に従う俺じゃない。隙をみて逃げようと企んでいたのに、呆気なく阻まれる。    昴さんが住んでるトコは、某団体事務所が経営しているビルの最上階にあった。事務所を中心に幹部の方々は高層階、それ以外の組員は下の階にお住まいになっていることを、昴さんから直接教えてもらった。    ゆえにエレベーターを使えば誰にも会わずに、さっさと逃げることが可能だったのだが――。    ここから逃げるべく、外の様子を伺おうと玄関から顔を出したら、スキンヘッドのコワモテ男が、ぬぼーと立っていた。扉から出た瞬間に目が合って、恐れ慄き顔を引きつらせると、 「ういっす!」    と元気よく言い放ち、ニヤリと笑う。 (その顔で、笑ってはいけないって。恐怖心が2割増しになる!)    俺は腹をくくり、思い切ってコワモテの男に話しかけてみる。 「う、ういっす。あの……ずっと、ここにいるんですか?」   「ああ、俺は昴さんのボディガードだからな。あの人になにかあったら、ここはお終いだから、厳重に守っているんだ」 「そうなんですか、お仕事ご苦労様です」 「おまえも昴さんのお世話を、心をこめてしっかりしろよ。手を抜いたりしたら、その細い首へし折るぞ」 「ういっす! 頑張ります!」  うひーうひーと心の中で叫びながら、慌てて扉を閉めた。   (絶対に逃避行は無理だ。あんなのと闘った時点でズタボロにされ、可燃ごみに出されてしまう気がする)    とりあえずここで生活をして、様子を見ながら、身の振り方を考えようと思った。きっといつか、隙ができるはずなんだから。

ともだちにシェアしよう!