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抗うことのできない恋ならば、いっそこの手で壊してしまえばいい22
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奪われた書類を取り戻すべく、アーサー卿の屋敷にベニーの運転で向かった。
「たった1枚の書類を取りに行くだけで、こうして翻弄される、こちらの身になっていただきたいですね」
ハンドルを握りながら、うんざりといった様子でベニーがぼやいた。後部座席で文句を聞いたローランドは、眉根を寄せて車窓に視線を飛ばす。
「だが、会議のある日で良かったと思う。無駄に引き留められるような、長居をしなくて済むから」
城下にある子爵の屋敷で、月一に開催される貴族の集まりがあるというのに、その前にアーサー卿の屋敷に寄ってほしいと頼まれたため、仕方なく向かっている。
「運が良かったと言えますね。そろそろ到着いたします」
「僕ひとりで取りに行く。おまえは車で待っていてくれ」
「ですが……」
「ベニーが傍にいたら、アーサー卿が面白がってからかった結果、口論になるのが目に見える。それこそ時間の無駄だ。それに危ない流れになったほうが、こちらとしては大歓迎だろう?」
ローランドは自分で後部座席のドアを開けて、そびえ立つアーサー卿の屋敷を仰ぎ見る。これから対峙する問題に比例した屋敷の大きさに、気後れしそうになった。
固まったままでいるローランドの背中に、運転席から降り立ったベニーが優しく撫で擦る。
「おひとりで、本当に大丈夫でございますか?」
心配に満ちたベニーの声が、ローランドの中にある不安を薄めていった。
背筋をしゃんと伸ばしながら一歩前に出て素早く振り返り、背中を擦っていたベニーの手を両手で握りしめる。
「おまえにそんな顔をさせないような一人前に、早くならなくてはいけないな。ひとりで大丈夫、行ってくる」
見惚れてしまいそうになる、輝いた笑顔を見せたローランドに、ベニーは深くお辞儀をして見送ったのだった。
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